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「ライオンハート、まだ講義の途中だ。就寝の時間ではない」
「はい教官、申し訳ありません!」
「筆記はトップの成績のようだが、実技はまだまだだ。これでは怪獣相手にすぐに殺されてしまう!」
「はい教官!気を引き締めます」
「罰として腕立て伏せ百回っ!」
現在、私は怪獣自衛隊の士官候補生として訓練を受けている。筆記試験は趣味で集めていたプラモデルたちに助けられたが、実技についてはまだ身体が追いついていけていない。ここにも女性士官は何名かいるが怪獣討伐で負傷した隊員の救助を担当する「看護部」や、食事の提供を担当する「給仕部」それから「事務部」に所属する者が殆どだ。怪獣討伐を遂行する「執行部」に所属するのは私一人だけだ。
「これからアローヘッド怪獣自衛隊執行部は、とても重要な任務をする事になる」
講義室でフィッツジェラルド教官は、隊員たちにそう告げると「但し情報統制は遵守しろ」と付け足してこう続けた。
「我が怪獣自衛隊の通常兵器ではこの度のつるはし頭は通用しない。そこで開発部は現在特殊兵器の開発中だ」
「教官、それはどんな兵器でしょうか?」
士官候補生の男性、ギデオン・アッシュクロフトが教官に訊ねた。
「それは公開出来ないが、これまでの戦闘より死亡率は倍高くなるぞ」
「開発状況はどのくらいですか?」
「現在で八十九パーセントだ、近日中にテストすると聞いている」
「教官、その特殊兵器は“私にも使えます”?」
「イエスでもあり、ノーでもある。ライオンハート、それに乗りたいか?」
「可能なら」
怪獣自衛隊の兵装は女性向けには作られていない。訓練内容もそうだ。なので私は男性自衛官と同じメニューを消化しなければ執行部で先頭に立つことは難しい。それでもどんな訓練だろうが耐えてやる。
怪獣がいて当たり前のこの国は、怪獣か人間のどちらが絶滅するまでどこにいても地獄でしかなかった。目の前で怪獣に両親が捕食された光景と比べれば乗り越えられない筈はない。
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