モンスターエンジン〜怪獣自衛隊〜

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「重症者が出たぞ! どいてくれっ!」  ふいに担架を担いだ怪獣自衛隊の医療チームがばたばたと駆け込んで来る。担架に担ぎ込まれた隊員はシーツを被せられて見えないが、状態ばかなり酷いようだ。  「脈はあるか?」「あるが微弱だ!」「意識はあるか?」「辛うじてな!」「傷口の状態は?」「酷い状態だぞ!」「感染は?」「恐らくしていない、とにかく手当てを急がないと!」  などと騒ぎながら治療室に搬送されていく。  「あれだけ隊員を送りこんで帰って来たのがたった一人か、つるはし頭の奴、また同胞を奪って行きやがる」  フィッツジェラルド教官は奥歯をキュッと噛みしめる。  「俺がお前たちと同い年のくらいの時もそうだった。とんかち頭に戦友を奪われた。俺一人だけ生き残ってしまった。結婚を控えてる奴もいれば家で子供が待ってる奴もいたのに。どれだけ奪っていけば気が済むんだよあいつは!」  「教官…」  「本当はお前たちも殺されて欲しくないんだ、もう誰にもっ! だから厳しくやって来たんだ。それでもまた奪うつもりなら俺も腹を決めるしかないか」教官は私に鋭い視線を向けてこう訊ねた「アメリア・ライオンハート、ロボット兵器に乗れ」  「ロボット、兵器?」さっき開発部で開発中の新兵器があるって教わったが、ロボット兵器の事だったのか。それをいきなり、私に乗れと?  「そうだ、ロボット兵器に乗れ。女でも操縦は可能だが、それをうまく操縦出来るかは個人の技量にかかっている」  「考える時間はないようですね」  「訓練している猶予はないと思え、秒で腹をくくれ、四十秒で戦闘準備を整えろ!」  「教官、一つ質問して宜しいですか」  「なんだ?」  「判断が急ですが理由があるんでしょうか?」  「さっき運ばれた隊員は、帰還後にロボット兵器のテストパイロットになる予定だった者だ。だがそれは不可能となったので、代役を立てなくてはならない。出来るな?」  そう問うて来た教官の表情は一段と険しく見えた。
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