中学生になって

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掃除の時間は一番テンションが上がる。 だって、クラスのみんなから離れて同じ班の海斗と一緒にいられるから。 その週の掃除は裏庭だった。 人目も届かずサボるにはもってこいの場所。 フッチは風邪で休んでいて、班の女の子は私一人。 私は、海斗と誠から少し離れた場所で掃除をしていた。 海斗は気を使って、話しかけてくれる。 誠は、最近流行っている芸人のギャグを真似しながら騒いでいた。(小学生か!) いつも私の方からは海斗をからかっているのに、向こうから話しかけられると、つい身構えてしまう。上手く話せない。 なのに私は(気持ちを聞くなら今だ!)と思ってしまった。 なぜ、そう思ったか自分にも分からない。 何かに背中をグイッと両手で押されたような感覚で…。 気づいたら「私のこと…?」と聞いていた。 さっきまで笑顔だった海斗の表情が、フッと真顔になり黙り込んだ。 私が(ヤバい…怒らせたかも、謝らなきゃ)「ごめん!」と口にした瞬間、被せるように「ふつう」と言われてしまった。 制服のブラウスが震えるほど、心臓がバクバクしている。私はもう一度「ごめん」と謝って、誠に無理矢理ほうきを渡し、その場から逃げ出してしまった。 裏庭には「俺が片付けるのかよ〜」と誠の声だけが響いていた。
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