:ボクの願い

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:ボクの願い

 キミが願ったからボクは生まれた。  ボクを構成する一部は、人間だったキミがその命の終焉を迎えた時に紡がれたキミの願いだから。 『彼女が笑顔を取り戻せる日まで見守って助けになってほしいと、キミがボクに願ったんだよ? そのキミが、彼女を再び泣かせてどうするの?』  キミに命を救われた彼女は、キミの分までがんばって生きろなんて悪意の無い励ましに傷ついて、キミの死を嘲笑う一部の人間の存在に傷ついて。  自分の命と引き替えにすれば、キミが生き返るならば……そんな考えに逃げようとして、踏み留まって。  未来に向かって歩き出す勇気を掴んだと思ったら、異世界に召喚されて……殺されそうになって。  時空が揺らいでいる場所からならば、元いた世界へ帰ることができるかもしれないと向かったら、そこから飛ばされた先でキミがその命を自ら絶とうとしていた。 『魔王が人間と敵対しなければならないなんて誰が決めたの? 魔王が勇者や聖女の敵だなんて誰が決めたの? キミ自身が人間の敵であることを望まなかったように、この世界に召喚されてしまった勇者も聖女も、誰かを傷付けることなんて望んでいないんだよ?』  抱く願いが同じでも、すれ違ってしまうことだってあるけれど、他者の考えを尊重することを知っているキミたちならば、共存共栄のために何ができるのか、話し合っていけるはずだよ。  かつての世界で、瓦礫に押し潰されそうだった少女の命を救ったのは、神の奇跡などではなく一人の人間の行動だ。  少女の兄は、妹の命の恩人に向けられる一部の人間の悪意に対して、他者の不幸を嘲笑う人間の心の貧しさを学んだ。反面教師というやつだね。  因果応報。  良い行いも、悪い行いも、巡りめぐって自分に戻る。  だからこそ、情けは人のためならず。  誰かのためではなく、巡りめぐって結局は自分自身のためになるのだと昔の人は伝えたんだ。
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