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▼言の葉の神になったボクの話
いつからだっただろう?
「神様、ありがとうございます」
ボクに届いていた願いが、日々の感謝に変わったのは。
「我々が生きる糧を育んでくれる世界の恵みに感謝いたします」
人間の力では防げない自然災害が神の怒りだと認識されてしまい広まっていく一方で、自然からもたらされる恩恵への感謝がボクへの感謝になっていく。
ボクは、八百万の神々の末席にいるかもしれないし、いないかもしれない、あやふやで、不確かな存在……だった。
けれど、ボクの声を聞くことができた人たちによって語り継がれていくうちに、名前すらなかったボクにも名前が与えられたから。
「言の葉の神の御加護がありますように」
〝言の葉の神〟……それが、その世界でボクに与えられた名前。
そう呼んでくれる人たちがいたから、ボクはその名前で人々から認識されている。
人々の幸福と笑顔を願う存在として、とある世界で語り継がれるようになったんだ。
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