:魔王と勇者と聖女

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:魔王と勇者と聖女

 時の流れというものは、過ぎ去ってしまえば、あっという間だったかのように感じてしまうものなのですね。  侵略を進める他国からの侵攻を警戒するあまり、 独断で異世界から勇者さまと聖女さまを召喚したお兄さま。  魔王討伐のためであると表面的には説明していたようですが、侵略戦争により領土を拡大し、その功績によって次期皇帝の座を継ぐ算段だったようですわ。  心優しき勇者さまや聖女さまには、お兄さまのそのような企みなどお見通しだったのでしょう。  わたくしたちのことは信用できないと告げられて、城を出て行ってしまわれたのですから。  それでも、勇者さまと聖女さまは、旅の途中で出会った人々を苦しみからお救いくださりました。  本来であれば、国の運営を担うわたくしたちが気付き対処しなければならなかったはずの問題もたくさん含まれておりましたのに、勇者さまと聖女さまは、言の葉の神へと捧げた祈り、『他者の不幸を願わない』とのその誓いの許に、その慈悲の御心で、多くの人々を苦しみからお救いくださったのです。
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