:ボクの願い

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:ボクの願い

 ボクを『言の葉の神』と呼ぶようになった人々が暮らす世界で、今日はお祭りが行われている。  先代の魔王である夜明久遠と聖女である百合亜の結婚式と、現在の魔王であり勇者でもある獅子崎玲央と元皇女マリアベルの結婚式が合同で行われたことを記念して誕生したお祭りなんだよ。 「創世神様、ならびに眷属のみなさま、我々が生きる糧を育んでくださる世界の恵みに感謝いたします」  ボクを構成していた一部は、この世界で『言の葉の神』になったから、この世界の創世神の眷属という認識になっているみたいなんだ。  ボクはどの世界にもいるかもしれないし、いないかもしれない……そういう存在。誰かの強い願いによって生まれては消えて行く、不確かであやふやな存在だったのに。 「我ら一同、言の葉の神様への誓いを厳守し、他者の不幸を願わず、あらゆる種族が共に笑顔で共存できる世界を目指すことを未来永劫の平和への祈りと共に、この地にて捧げます」  祭りの始まりの宣誓が妙なことになってしまっているんだけど……それ、ボクじゃなくて、この世界に召喚された彼らが残した言葉なんだけれどなぁ。  彼らが合同結婚式をした時にね、同じようなことを言っていたんだけど、それが祭りの宣誓として残ったみたいなんだ。 「願わくは、人々の幸福と笑顔を願う言の葉の神様の御加護がありますように」  強い願いごとには引き寄せられる。  それがどんな願いであったとしても。
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