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▼ボクが生まれた時の話
遠い遠い昔の話。
気がついた時には、ボクは存在していた。
なぜ生まれたのかとか、どこから来たのかとか、どの世界に属する存在なのかとか、そういったことはよくわからないまま、ボクはそこにいたんだ。
記憶にあるのは一つの雫。
どこかの世界の誰かが強い願いと共に流したその涙がボクを生み出したんだ。
それから、さまざまな世界にボクたちは生まれて、他者の不幸を願わないボクたちだけが融合して、今のボクを構成している。
今のボクにならなかったボクたちは、消滅したり、ボクとは別の存在になっている。
ボクとは別の存在となったそれらは、悪霊と呼ばれたり悪魔と呼ばれることもあったね。
ボクを涙の精霊と呼んだのはどの世界だったかな……その世界ではボクという存在が認識されなくなってね、その世界でのボクが消滅してしまったからよく思い出せないんだ。
ボクを〝神〟と認識してくれる世界で、ボクは八百万の神々の一柱に加えてもらい、人々から『神様』と呼ばれる存在になった。
強い願いには引き寄せられるけれど、ボクの声に気付いてくれる人の子は、どの世界にも、ほとんどいなかったんだ。
寂しくないと言ったら嘘になってしまうけれど、見守っていくことしかできないのがボクだから、仕方がないことなのだと諦めていた。
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