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:叶えられる願い
ふわり、と……優しい風が吹いた。
どこか暖かくて、包み込むような風。
『泣きたい時には、泣いてもいいよ。……涙は、弱さを証明するものではないからね』
「……え?」
声が聞こえた気がして振り向いても、そこには誰もいない。
『人間はね、泣くことで、ストレスぶっしつ(だったかなぁ?)を体の外に出しているのだと聞いたことがあるよ』
けれど、声は確かに聞こえる。
『泣くだけ泣いたら、また笑えばいい。ボクには、死んだ人間を生き返らせる力なんてないけれど、ただここから見守っていくことしかできないけれど……キミが笑顔になれる日が来ることを願っているからね』
溢れ出る涙を拭った人の子は、姿の見えない誰かがいるであろう、声が聞こえたほうへと一礼すると、何かを吹っ切れたような表情を浮かべて去って行った。
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