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第6話 後宮入りします6★
再び、俺は自室に戻った。すると、リュイさんが紫晶宮を出て行ってから十分と経たず、扉がノックされた。
「はい」
「俺だ。入ってもいいか」
この低い声音は、間違いない。アウグネスト陛下だ。判別がついたからいいものの……まだ知り合って間もないんだから、きちんと名乗れよ。
心中で小言を言いつつ、俺は寝台から立ち上がって戸口に向かう。内側から扉を開けると、そこにはやはりアウグネスト陛下が立っていた。
今は、昼間に見た子狼を抱っこしていない。夜遅いから、寝かせてあげたのかな。
「これはアウグネスト陛下。お待ちしておりました」
日中、テオから叩き込まれていた跪拝の礼をとる。なんで夫相手にこんな仰々しい挨拶をするんだって思うのは、俺が平民出身だからか。
「そう堅苦しい挨拶はしなくていい。楽にしろ」
「ありがとうございます」
立ち上がって、アウグネスト陛下を自室の中に招き入れる。
とうとう、初夜か。どきどきするなぁ。前にも言った通り、性経験こそないけど、性行為自体に興味はあるんだ。
自然と寝台へ直行して、俺は寝台の上に上がる。そのまま押し倒される……と、思いきや。
「後宮での暮らしはどうだ」
アウグネスト陛下はなぜか寝台の端に腰かけて、気遣うように声をかけてくる。押し倒してくるような雰囲気は微塵もない。
あれ? 性行為するんじゃないのか? 俺はそのために後宮入りしたはずなんだけど。
っていうか、後宮での暮らしはどうだって聞かれてもな……。まともに暮らし始めたのは今日からだぞ。答えようがないよ。
「えーっと……みなさん、優しい方々ばかりで居心地よく暮らせそうです」
当たり障りのない返答をする。まぁ、別に嘘でもないけど。
「そうか。それならよかった」
ふっ、と優しげな笑みをこぼすアウグネスト陛下。
お気遣いはありがたいんだけど、なんなんだ? 雑談をしにきたのかよ。俺はそんなことよりも……、――早く性行為を体験してみたいんだ!
我ながら短気だと思うけど苛立ってしまって、誘われるよりも先に自分から寝間着に手をかけた。カーディガン、上着、肌着……と、一枚ずつ脱いでいく。
突然、衣服を脱ぎ出した俺を、アウグネスト陛下は目を丸くして凝視した。
「ど、どうしたんだ。そんなに急ぐことは……」
「私にムード作りは不要です。私は夜伽役の王婿です。どうぞ、欲求の赴くままにお抱き下さい」
絶倫王なんだから、本心では俺にとっとと手を出したい、はず。
あ、ほら。俺の上半身の裸姿を見ただけでも、股間がちょっと盛り上がっているじゃん。こりゃあ痩せ我慢をして、雑談していただけだな。
がっつく男だと思われたくないのか、教会送りにした元王婿たちのようにしたくないから遠慮していたのか、分からないけど。
下着ごとズボンも脱いで裸体を晒すと、アウグネスト陛下はごくりと生唾を呑み込んだ。俺の身体から目を逸らせないようで、食い入るようにじっと見つめている。
……うっ。そんなに凝視されると、さすがに恥ずかしいんだが。
つい、掛け布団を掻き合わせて下半身を隠す。頬を赤らめて恥じらう姿が、男心をくすぐったのか、アウグネスト陛下も寝台の上に上がってきた。
腕を伸ばして、俺の頬にそっと手を触れる。
「綺麗だ」
「い、いえ……あっ」
むにゅっとした柔らかい感触が、唇に押し当てられる。それがアウグネスト陛下の唇だということに、数拍遅れて気付く。
俺のファーストキスを奪われた。これがキスの感触か。
なんか、想像していたものと違う。甘い味がするんじゃなかったのかよ。無味無臭じゃん。
と、若干不満に思っていたら、半開きだった唇の隙間に、アウグネスト陛下の舌がぬるりと滑り込んできた。びっくりして舌を引っ込めようとすると、逃すまいと追いかけてくる。
「ぁ……んんっ」
あっさりと捕まってしまい、絡めとられた。
これまた、無味無臭で甘さの欠片もないんだけど……なんだろう。ちょっと気持ちいい、かも? 実際、俺の下半身は僅かながら反応している。
とどめにちゅっと吸われると、さらなる快感が下半身を直撃した。キスとディープキスの意味の違いってよく分かっていなかったけど、なんとなく理解できた気がする。
と、硬くなり始めた花棒を、アウグネスト陛下の手が優しく包み込んだ。そのまま上下に扱かれると、たまらなく気持ちいい。
ディープキスによる快感と、息子に直接与えられる快感と。異なる二つが、津波のように押し寄せてきて、強く感じさせられる。
なんだか、頭が快楽でふわふわとしてきた。
「あ……イ、イっちゃう」
他者から与えられる快楽に不慣れなこの身体は、堪え性がないみたいだ。すぐに限界がやってきた。
自慰で達した経験なら山のようにあるんだけど、それとはまた違う感覚に俺は少し恐怖心を覚えてしまって、縋るようにアウグネスト陛下の胸にしがみついた。
それでも、アウグネスト陛下の手の動きは止まらない。どころか、ますます速くなる。
「も、ダメ……イ、く! ――あぁああああ!」
膨れ上がった俺の花棒から蜜液が飛び出した。達したんだ。
ふぅ。気持ちよかった、な。
――って、待て。
俺ははっと我に返る。やばっ、アウグネスト陛下の手を汚してしまった!
慌てて身体を離し、謝罪しようとしたけど、アウグネスト陛下は構わずにとうとう俺のことを押し倒した。俺の両足を開いて、なだらかな双丘に蜜液で汚れた指を這わせる。
指が最奥の窄まりに届くと、その周囲に蜜液を塗りたくった。挿入するための潤滑剤替わりにしているんだろう、多分。
な、なんだか、くすぐったいな。
身を任せていると、ほどなくして後孔に指が一本入ってきた。一本目はあっさりと飲み込んだけど、二本目になると……少し圧迫感を覚える。
だ、大丈夫かな? 裂けたりしないよな?
俺の表情から不安を察したのか、アウグネスト陛下は宥めるように俺の額についばむようなキスを落とす。
「心配するな。優しくするから」
「は、はい……」
後孔に挿し入れられた指二本が、ぐるぐると円を描くように動く。強張ったそこをほぐしてくれているんだろう。本番前の準備体操的なやつ。
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