ポケットに忍ばせた狂気

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高校生になっても、皆の前で休み時間にマジックを見てもらって、感想を聞いて、腕を磨いていた。 同級生も楽しんでみてくれていたと思う。普段話さない男子や女子からも、 「おもしれーじゃん!また新作あったら見せろよ」とか「凄いね~!手先器用だね!」などと言われていた。 そして、私のマジックを一番誉めてくれたのは、担任教師、大野貴先生だった。 大野先生は三十代前半の体育教師で、アメフト部の顧問だ。黒い短髪で、鍛え上げられた肉体に、目鼻立ちの整ったイケメンだ。既婚者で子煩悩で明るい性格で、生徒からも好かれていた。 私も自分のマジックを楽しんで誉めてくれる先生が大好きだった。 だから私の卒業を待たずして、先生が他の学校への転任が決まったときは寂しくてしょうがなかった。
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