ポケットに忍ばせた狂気

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あの日のマジックのネタは、大野先生が皆に最後の挨拶を終えると、私が席から立ち上がり、ポケットからマジック用のニセモノのナイフを出して、先生を刺す。 先生にはすぐ破れる袋に血糊をセットしてもらい、床に倒れながら袋を破ってもらう。 そして皆が騒然となったとき、教壇の下から『ドッキリ大成功!』の札をピンピンしている大野先生に挙げてもらう。 という手順だった。 マジックというよりドッキリだが、皆をビックリさせて安心させて笑わせたかっただけなのに……。 私のニセモノのはずのナイフはいつの間にか本物にすりかわっていて、それに気付かぬまま、大野先生を刺してしまったのだ。 いつまで待っても起き上がらない先生……。 本当の血の臭い……。 そしておそるおそる教壇の下を見ると、『ドッキリ大成功!』の札はなかった。 その瞬間、私の頭は真っ白になった。 気が付けば、私が解けないマジックにかかっていた。
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