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行人は自分の制服のポケットからナイフを取り出した。そして先端を触って引っ込める。
「簡単すぎたよ。あの女のポケットからナイフを入れ替えることくらい。だーれも気付きやしねぇ!」
菜名は少し声が大きくなった行人の唇に人差し指を当てた。
「でも死ななかったのは残念。あのセクハラ教師、既婚で子どももいるくせに高校入ってからずーっと、言い寄ってきてマジでウザかった」
「その話聞いたときは、俺がぶっ殺してやろうかと思ったぜ」
拳を膝にドンとぶつけた行人を制するように菜名は行人の手を触った。
「遥には少し罪悪感はあるけどね。でも小学校の頃からマジックを毎日見さされたり、助手をさせられたり、ウンザリだった……。やんわり嫌だって言っても、親友でしょ?お願い!って」
菜名は行人にもたれかかり、自分の髪の毛を指で巻きながら、話し続けた。
「昔から悪のりが過ぎて、周りの子達から少し引かれてるのも全然気付いてなかったし
……。大野も、『遥がやっぱりマジックはやめます』って言ってるって伝えたら、
『さすがに悪のりが過ぎるよな』って笑って、ドッキリの看板と血糊を押し付けてきたし」
行人が「俺が一番のマジシャンだよな」と意地悪く笑った。
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