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次の日、俺とヒナは、実際に神殿があると言われる場所へ行ってみることにした
カイザルとエレンは、教会等を周り、神殿について聞き込みをしてくれることになった
アーロンとあいつは……トラブルさえ起こさなければ、それでいい
到着して見た神殿は、思ってたより古びていて、大きかった
かなり崩れている
入るのは簡単そうだが、この崩れかけた神殿の中を、あちこち動き回るのは、それだけで危険だろうな
神殿の周りには何もない
道、石、岩、たまに雑草が生えてるくらいだ
少し離れたところに、以前何か建物があったのか、少し広めな広場のような場所がある
それ以外は、建前らしき物もなければ、人の姿も全く見ない
とりあえず、入り口となりそうな場所を探してみる
幾つか、と言うか、幾つもある
恐らく、崩れただけではなく、盗賊のような者達によって破壊もされているのだろう
階段、入り口、窓、外から見える情報だけ、ヒナと確認して戻ることにした
夕方、一度宿に集まり、皆で夕食へと向かう
そう話してたのに、あいつら2人が戻って来ない
「あいつら遅いな」
「また飲み過ぎて、アーロンに叱られてる頃かしら?それとも、いい相手を見付けて賭けでもしてるのかしら?」
エレンとヒナがそう話していた時
バーン!
ノックもなしに扉が開き
「おい!喜べお前達!今日は最高のディナーにありつけるぞ!」
そう言って仁王立ちしたまま、あいつが、ふっふっふ~と勝ち誇った様に笑った
聞けば、いつもの周辺探索をし、旨い酒を飲み、そろそろ宿に向かおうかという時に、ある男を見付けた
そいつに話し掛けようとした時、ガラの悪い奴等が襲い始めた
「こっちが先に声掛けようと思ったのにあいつら…。それで、アーロンにチャチャっと退治してもらったわけ」
アーロン…
またそんな使われ方されたのか…
「一応聞くけど、なんでそいつに話し掛けようと思ったんだ?」
「なんで?あ!こいつ、なんか面白そうだと思ったからだ」
……聞いた俺が馬鹿だった
「続けてくれ」
「そしたら、そいつ超いい奴でさ。なんかお返ししますって。だから、なんか面白い話とか、場所とか教えてくれって言ったんだ。そしたら、自分はここの土地の領主なんだって。今晩夕食ご馳走するから、その時にゆっくり話してくれるって、場所教えてくれたんだ!早く行こうぜ」
「ええ!領主様?凄い人だったのね~」
「おお!それは期待出来るな」
「ええ、楽しみですね」
この、信じられない偶然に、もう驚く者は居ない
あいつは、信じられないくらい、本当に運がいい奴だ
運だけで生きていると言っても過言ではない
あいつが選んだ選択肢で、あいつが間違えただの、失敗しただのと言ってるのを見たことがない
もちろん、それが俺達にとっての失敗だった事は、数え切れない程あるが…
「それにしても、この土地の領主様を、この土地で襲うなんて物騒だな」
「人は、不幸だと感じる時、その捌け口を探そうとします。自分より弱い者。或いは、本当にその者に責任があるかどうかは置いておいて、そういう立場にある者。不思議なもので、それでも尚、自分の周りにある綺麗なもの、優しいものが見えなくなってしまうのです」
俺の一言に、カイザルが教会の人間っぽく答えた
ま、カイザルの場合、毎日一緒に居るのに、神を拝むように見つめるエレンが居る限り大丈夫だろな
「なんでもいいから、さっさと行くぞ!」
そう行って歩きだしたあいつの後を追って、俺達は領主様の元へと向かった
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