ルキナ

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「ようこそ。お待ちしておりました。どうぞ中へ」 門番に招き入れられ、屋敷の中へと入る 立派な屋敷だ 本当に領主様なのだろう 通された室内には、すでに食事のセッティングがされていた 着席して少しすると、 「お待たせいたいました。本当に皆さんで来てくれたのですね?初めまして。この辺りの領主をしておりますレイヴと言います」 きちんとした身なりの、アーロンと同じ位の年代の男が、愛想良く挨拶をしてきた 俺達も立ち上がり、それぞれ名前を言っていく すると、 「なんと…!これは……偶然なのでしょうか…。いえ、きっと女神様が出会わせてくれたのでしょう…。ああ、女神様。このような出会いを与えてくださった事に感謝致します」 俺達が、何が起こったのかわからず、ポカンとしていると、 「ああ、これは失礼いたしました。話は後で。どうぞお座りになって下さい。それでは食事を始めましょう」 そう言うと、使用人が次々と美味しそうな料理や酒を持って来る 急に俺達を招く事になったのに、どれも素晴らしい料理で、使用人達も皆、こんな普通の旅人に対して、礼儀正しく振る舞ってくれる すっかり満腹で満足していると、レイヴが話し出した 「さてと、面白い話、場所でしたね?皆さんが、どんな事に興味をお持ちなのかは分かりませんが、旅人でしたら、この土地に古くからある神殿の話を聞いた事はございませんか?」 まさしく、俺達が欲しい情報そのものだ! 「神殿の話かぁ。それ、面白いのか?」 あいつが余計な事を言い出す 「ふふっ。そうですね。面白い話と言うより、情けない話になってしまうかもしれませんが…」 「え?んじゃ別の…」 「いや!その神殿の話を聞かせて下さい!」 こいつ… せっかく、土地の領主から神殿の話を聞けるってのに、断わろうとしやがった 「そうですか?では…。あの神殿は、もう本当に古い物で、いつ建てられたのかも、はっきりとはわからないのです。おそらく3回程建て増しされているという事は分かっているのですが、とにかく長い年月、過去には戦争に巻き込まれたりもしましたが、未だに形を失わず、ああして残ってくれているのです。普通、神殿とは、人々の生活の場が出来て、その近くに作られるものです。ですが、あの神殿の周りには、そういった生活の場というものが確認されていません。そもそも周りは山に囲まれておりましたし、おそらく初めから生活の場とは切り離し、聖地のように考えられた場所へ、神殿を建てたのではと考えられています。そして我が国は、長い歴史の間、大変信仰心の厚い国でした」 レイヴが嬉しそうに語る 山? 神殿の周りには山も何もなかったけど… 「ですが、時の流れと共に神殿が崩れ落ちていくように、人々の信仰心も薄れていきました。かつては、周辺諸国や、神殿の噂を聞き付けて、長い時間をかけて巡礼に来た旅人も居たのだと聞きましたが…。神殿の修復や、神殿周囲の道の整備もしたようですが、この国の者自体あまり関心を持たなくなってしまったので…。昔から人の往来によって、それなりに栄えてきたこの国は徐々に衰えていきました」 衰えていった国… 国の建物や街並みを見る限り、そんな風には見えなかったけど… 一息ついた領主が、少し寂しそうに続ける 「50年程前でしょうか…。国王陛下は大きな決断をしました。武器を作って売る事により、経済を発展させようとしたのです」 「武器…ですか?それはまた…随分とかけ離れた分野ですね?」 カイザルが不思議そうに聞く 「そうですね。ですが、勿論何の考えもなしに、そうしたわけではありません。元々この国の土地は、農作物を育てるには適していませんでした。神殿の修復技術を生かして、それを経済に発展させようともしましたが上手くいかず。神殿の近くにあった、第2の神殿とでも言うんでしょうか…。そちらは、建物自体小さかったですし、損傷も少なかったので、立派に修復してみたりもしましたが、それで国の活気が戻る事もなく…」 第2の神殿? そんな物なかったけど…
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