ルキナ

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「実は昔から、この国で作られた刃物は良質だと、武器を求めて来る者が、それなりにおりました。ただ、神殿の聖地として栄えてきた国ですし、人を傷つける道具である武器作りを推奨する事も出来ず、作り手が少なく時間もかかるので、それなりの数しか作れなかったのです。ですが、この国の状況を見かねた国王陛下は、国を挙げて武器作りをしていこうと決めたのです。どうやら技術というより、この国の山に含まれている鉱物が貴重な物らしく、刃物を扱ってきた者達を中心に、大々的に武器作りを始めました。少しずつ噂は広がり、近隣諸国から武器を求めて来る人達が増えました。国自体も、武器屋が増え、山を切り崩す職人達が増え、どんどん活気づいていきました」 なるほどな たしかに武器屋の文字が多かったな 「店や家が増え、道が整備され、国は活気を取り戻しました。人の往来が増えた事で、神殿の修復技術を求めて来る者もいましが、神殿への関心、信仰心が戻る事はありませんでした。そうして武器を作り始めて10年程経った頃、土砂崩れが頻発するようになりました。木を切り、山を切り崩してるのですから当然かもしれません。ですが、それだけではなく、豪雨が続いたのです。農業に力を入れていないこの国にとって、必要以上の雨は迷惑でしかありませんでした。山での作業や、人の往来の妨げになり、土砂崩れや川の氾濫で、国益は下がる一方です。国の者達も、せっかく豊かになってきた生活を手放したくはありません。何より、人の往来が途絶える事のない立派な道を整備し、来るのを待つだけではなく、積極的に武器を売りに行き始めました」 「相当その武器は、いい物なんでしょうね?」 カイザルが口を挟むと、 「俺も昔聞いた事がある。この国で作られた剣を持てる者は幸運だと」 珍しくアーロンが答えた 50年前から10年程経った頃… 世界の不自然な現象が始まったのも、40年程前からだと聞く 「そうでしたか。この国の名声が広がるのは嬉しい事です。ですが、この国の自然という物は、あっという間に消えていきました。山の木は切り倒され、埋め立てられた道には、雑草が少し生えるだけ。動物達も皆、何処かに行ってしまいました。けれども、皆さんご存知の通り、災害は治まるどころか、あらゆる形となって、その後も続きました。それに伴い、利益を上げる為また木を切り山を切り崩す。私が物心ついた頃、ついに神殿の周りの山まで、失われ始めました。勿論、反対意見も多かったのです。長年この国を支えてきてくれた神殿の周辺だけは、手をつけるべきではないと…」 「聖地とされてきたのですから、神殿だけではなく、その周辺も含めて聖地と捉えている人も少なくはなかったでしょうからね」 なるほど… カイザル、腹黒いとこはあっても、さすが元教会の人間… って… あいつ!気持ち良く酒を飲んでたかと思ったら、コクリコクリと頭を動かし始めてる おい! アーロンに視線を送るが、眉間の皺を深めて、面倒くさそうな顔になっただけで、視線を逸らされた くそっ 俺達のやり取りに等気付く様子もなく、レイヴが話を続ける 「その通りです。ですが、その反対意見を退ける程の、有効な打開策もなく、少しずつ山は消えていき、神殿だけがポツンと残されたのです。鉱物は有限です。皆もそれを理解はしていたものの、それに代わるものも見付からないまはま、受け入れたくなかったのでしょう。ちょうど私が領主になる少し前、ついには、第2の神殿を取り壊そうという話になったのです」 「神殿を?その神殿にも鉱物が含まれてたのか?」 そう、エレンが聞く 「ええ、残されている神殿ほどではありませんが、相当古い物ですし、あの辺の山を材料にして建てられたのだろうという事は分かっていましたから。教会の方達も、かなり強めに訴えてはいました。けれども、第2の神殿自体謎が多すぎて、本当は関係ないのではないかという意見も以前からあったのも事実なのです」 ? 関係ない? そんな昔から建ってて、そんな事あるか?
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