ルキナ

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「今残されている神殿の少し離れた場所に建っていたのですが、どこかで繋がっていたわけではなく、中に何か神殿たる物があるわけでもなく、何故歴史の中で、建て増ししてきた本殿とは別に、離れた場所に建てられたのか…。あの聖地とされる山に囲まれた中に、その2つの建物以外なかった事からも、神殿あるいは神殿に関連する何らかの建物であると考えられてはきましたが、誰にもわからないのです。そんな事情もあって、第2の神殿は取り壊されてしまったのです。この国の者として、本当に悲しい事です。父も失くなる直前まで、止められなかった事を悔やんでおりました。神殿まで壊し、鉱物はなくなり、災害は治まらず、国の者達の生活は苦しくなるばかりです。そんな訳で、この辺りの土地を治めている私を恨む者も少なくはないのです」 「それが分かっているのなら、あまり1人で出歩かない事だな。いくら地味な装いをしていても、質のいい物かどうか位、見る者が見れば分かる」 知らない奴が見たら、この人を、救ったんじゃなく、襲ったんじゃないかと思うような顔でアーロンが話す 「ええ。いつもは1人警備の者を同行させていたのですが、今日は急な用事で近くまでだったので油断しました。本当にありがとうございました。ですが、お陰であなた達にお会いする事が出来ました。これはきっと、女神様のお導きだと思います」 ? さっきも女神様がどうとか言ってたけど… 「さっきも言ってましたが、女神様のお導きとは、どういう意味ですか?」 ヒナが俺の聞きたい事を聞いてくれる 「エイレイテゥイア。あの神殿で崇められていた神は諸説ありますが、最も有力なのが、エイレイテゥイアという女神様です。私は、父の影響で幼い頃から何度もあの神殿を訪れて来ました。そのせいもあってか、私にとって女神様は何よりの信仰の対象となったのです」 それは…  第2の神殿が取り壊された時、相当ショックだっただろうな… 「エイレイテゥイア。その時代や国や地方等で、その呼び名は幾つか存在します。その中の1つがルキナ…あなたと同じ名前です」 「んあ?」 既に、夢でも見てそうなあいつの方を見てそう言った 当の本人は、女神様から遠く離れた、だらしない顔で、急に話を振られて周りを見渡している 「人生の中で親愛なる女神様と同じ名前のあなたに会い、命を救われた。こんな偶然ありません。女神様が救ってくれたに違いありません。感謝いたします」 まるで本物の女神様を見るかのように、あいつを見ている 「あ?女神様?んっと…それで?あの神殿の事は分かったのか?明日早速探検か?」 起きたかと思うと、すぐにいつもの調子を取り戻す 「なんと…。あなた達は、あの神殿に行こうとしているのですか?」 「はい…。世界で起きてる不自然な災害現象。その場所に行って、復興の手伝いをしながら情報を集め、ここまで辿り着いたのです。ここに原因があると聞きまして」 俺がそう言うと、 「ああ…。女神様の名を持ったお方が、あの神殿を訪れてくれるとは…。それも、この現象を治める為に、これまでもご尽力されてきたとは…。私に出来る事でしたら、何でもいたします。何でも仰って下さい」 レイヴが涙を浮かべながら話す いや… たしかに俺達は、各地で復興の手伝いをしながら旅して来たが、あいつに関しては、自分の好きな様に好きな事をしながら、俺達と同行しているというだけで、ご尽力という点では…… それは言うまい 「では、出来れば1度神殿に同行していただき、詳しくお話を聞かせていただけると有難いです」 カイザルが、ありがた~い笑顔でそう言うと、 「勿論です。私の持てる知識全てをあなた達に」 レイヴはそう言って、明日神殿へと同行する約束をし、俺達は屋敷を後にした
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