煙草の火

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ーーカチッ。 雪のように真っ白な肌に、私の視線は奪われていた。 「うわ、これ最後の一本かよ。」 隣に座っている先輩が、いつも通り何の銘柄かもわからない煙草を吸いはじめた。この火が消えるまでに私は。その決意をそっとポケットにしまいこむ。 「ていうか先輩、寒くないんですか!? なんですかその格好!」 どうせならもっと先輩と近づきたい、という私の本心を度々チラつかせながら私は言った。 「そんな寒くねーだろ。やっぱ煙草は冬の方が美味いよなあ。」 「夏でも秋でも変わんないですって。」 頭だけ覗かせた本心はシャイなのか、またスッと奥に戻ってしまう。若干の不貞腐れ気味の私の発言を聞いて先輩は何故かニヤついている。 「それで?こんな時間に呼び出してなんだよ。」 ふぅーーっと、本題に入る合図かのように先輩は煙を吹き続けている。まだ後、3分の2ほどの煙草が残っている。余裕そうな先輩の素振りが、私の余裕を無くしていく。 「いや、その、、、実は先輩に聞きそびれちゃったことがありまして。」 「聞きそびれたこと??はは、なんだそれ。ちなみに彼女はいないぞ?」 「そんなの知ってますよ!!」 そんなことわかっている。私がこの人とどれだけ一緒にいたか、この人のことを私がどれだけ知っているか。だからこそ、聞きそびれたことが悔しくてしょうがなかった。 「大したことじゃないですよ、、」 ボソッと、私が独り言のように呟く。 「え?何??」 本当に聞こえていないのか怪しいと思えるほど、相変わらずに口角を上げている先輩が私に寄り添った。体がとても近い。真っ白い肌からは想像つかない、内側から確かな暖かさを感じて安心ができる。ゆっくり時が流れているかのように思えた。しかし先輩が右手に持っている煙草はもう少しで半分近くなくなってしまうとこだった。 「その煙草、最後に私にも吸わせてくださいよ。」 「ダメだ。お前どうせ蒸せて泣くだろ?」 「泣かないですって!子供じゃないんだから!」 が、既に泣きそうになっている私にきっと先輩は気づいているだろう。 「先輩が好きなタバコって、どんな味なんですか?」 涙目で俯く私は、先輩の顔が見れなかった。 先輩の、吸った息を吐く音が耳に入ってから顔を上げた。 「吸ってみるか?」 先輩が右手に持った煙草を私に差し出す。 もう、3分の1もない。 黙って頷く私に微笑む先輩。彼は依然として暖かい。 私は煙草を受け取り、口に咥える。 火照った頬を感じながら目を瞑り、ゆっくりと息を吸う。 先輩の最後の煙草の火が、燃える。 私は目を開き、 骨を拾う。
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