僕と君が旅する世界

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 僕は小学生になった。年齢の成長と共にふしぎなポケットの超能力も失われるかと思われたが、そのままであった。成長して悪知恵が身についてきたのか、有効的に活用している。 増やしたお菓子で腹を満たすことは幼稚園時代から変わりない。増やしたお菓子を友人に上げることで「人気者」として扱われている。  お金には困っていない、小銭をポケットに入れて叩くだけで無尽蔵に増やすことが出来るのだから当然である。親から貰った一枚の500円玉を増やしては貯金箱に入れることが毎日の日課になっていた。 貯金箱にギッシリ詰めた500円玉を銀行に持っていき両替をしようとしたのだが、銀行員から「君、このお金どうしたの?」と詰問され「コツコツ小遣いを貯金した」と誤魔化したのだが「お父さんやお母さんにも確認を取って立ち合って貰おうか?」と言われてしまった。両親の500円玉貯金を盗んだとでも思ったのだろう。僕は銀行員の猜疑心に満ちた目に恐怖し、逃げ出してしまった。両親にこのお金の出本を説明したところで信じてもらえる訳がないし、怒られるか悲しまれるかのどちらかになると思った故に両替を諦めたのだった。 だから、僕は基本500円玉でしかお金を払わない。 僕の住む町内では500円玉が異常流通しているかもしれないが、小学生の買い物程度故に怪しまれることはないだろう。  親戚からお年玉で一万円札を貰ったため、ふしぎなポケットで増やしてみた。試しに百万円にしてみたのだが、百枚全てが同じナンバー、扱い的には「偽札」である。 一枚だけを使うならば問題ないのだが、叩いて増やした二枚目以降の紙幣を使えば同じナンバーの札が市場(しじょう)に出ることになるために大騒ぎだ。それに気づかず、何も考えずに二枚目以降の紙幣を使って豪遊しようものなら、すぐにナンバー一致からの市場崩壊だ。 警察は地獄の底まで流通元を追いかけてくるに違いない。その流通元が僕のポケットであると説明しても、流通させたことの方が問題。いずれにせよ逮捕間違いなしだ。 「このお金は使えないな…… 意味ないじゃないか。本当に役に立たない超能力だな」 僕は悄然としながら、九十九枚の一万円札をビリビリに破きゴミ箱に捨てるのであった…… これで気がついたことがある。ナンバーの刻まれたものを増やすことは危険だということだ。
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