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「質問の答えね」
サンダーが切り出す。ジョージはつい気になってしまった。この色気に満ちた男の秘密を知りたい、と思い耳が大きくなる。
「俺も金。だって欲しいものがたくさんあるから」
あっけらかんとした回答だ。ジョージはがっかりした。
「同じだ。生活苦しいですよね。アルバイトで生きていくのは苦しいです」
「女に貢いでもらうのも飽きたし。妊娠したとか発狂するの勘弁。ちょっとかわいがっただけで付き合ってるとかさ、女って俺にはモノと同じなのに」
ジョージは理解が追いつかない。しかし、トムは違った。
「へえ、そんなことないと思いますけど。随分なことをいいますね」
サンダーが笑う。声がよく通る男だ。
「出た、偽善。あんたらはエリアP民らしいよ。皆、張り付いた笑顔で本音を話さない。エリアP、やはり嘘つきばかりね。そういう事言うやつが他人の女と寝てきたの何度も見たよ」
トムの顔が真っ赤になる。ジョージはまずいと思った。トムの怒りは顔色でだいたい分かる。
「…やはりあなたと僕はあいませんね。そういう人が僕は嫌いです。それに性別やエリアで人格を決めるのはどうかと。あなたがどこの方か知りませんし関心もありませんが、育ちがしれますよ」
がたん、と椅子がひっくり返る。
「おう、喧嘩したいか」
エリアOの言葉で怒鳴られると怖い。市役所にたまに来るクレーマーの中にはエリアO民もいるが、彼らに怒鳴られると震え上がってしまう。
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