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ジョージはエリアP民だ。ビッグ・アイ連邦は世界中からの移民で構成されている新しい国家である。戦争や差別のない平和な理想郷を求めて多くの人が移住した。ジョージの祖父も、幼い父を連れて移り住んだ。 しかし、完全な平等や平和の成立は極めて困難であり、この連邦でも例外ではなかった。人々は出身地域でヒエラルキーを作り始めた。ジョージの祖父の出身地域はエリアPと定められたが、エリアPは低いレベルだ。おかげでジョージの一家は母国と変わらないレベルの生活を強いられ、それは今でも続いている。 ジョージの実家はクリーニング屋を営んでいる。エリアO、P、Q民によくある職業の一つだ。横柄なエリアA民にクレームを受けている父を見ては、母はジョージに言い聞かせた。 「勉強しなさい。勉強して高い学歴を手にすれば偉くなれるのよ」 ジョージは脇目も振らず勉強した。試験では高得点を目指した。周りのエリアA民はジョージを嘲ったが、ジョージには気にならなかった。教科書を捨てられても、眼鏡を叩き割られても、勉強を頑張った。 その甲斐あってか、ジョージはなんとか普通のレールを歩めている。この州一番のタウンズビル大学の工学部に好成績で入学し、五年間学び大学院卒の資格も手にした。修了後は市役所に就職できた。 しかし、その一方でレールから外れないために毎日必死に生きている。外れた先のことを考えるだけで身震いがする。とにかく生きていくためには頑張るしかない。何が待っていようとも。
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