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「えー、みっくんのおうちー、おとまりー!」
「こら、希乃愛。お行儀悪いでしょ!?」
「きゃー!!おとまりー!」
希乃愛が目をキラキラとさせて、靴を脱ぎ捨て走り回る。
ちゃんと靴を揃えなさいと言ったところで、はしゃぐこの子に聞き入れて貰えるわけがない。
どうして、希乃愛が主任の家にいるのかというと__。
家に帰りたくなくて、希乃愛と離れたくない私の様子を見て、彼が母にお願いをしたのだ。お母さんも私の不安定さを心配していたようで、希乃愛とお泊まりを許してくれた。
……お姉ちゃんにはすごく悪いけど。
「申し訳ありません、今夜はご迷惑をおかけします」
玄関に立つ姉が、主任に深々と頭を下げる。
隣の母が「そんな改まらなくて大丈夫よ~」なんて、姉の背中をポンと叩いた。
「希乃愛は彼に……懐いてるのね」
「あ、希乃愛の好きなね、覆面ライダーのみつきに似ててね……うん、ごめん」
きゃっきゃ、と騒ぐ希乃愛が部屋の奥へ駆けていく。そんな姿を見て、お姉ちゃんが寂しそうに笑みを見せた。
ズキンと胸が痛むけど、私だって希乃愛と過ごしてきた時間がある。
「あの、お姉ちゃん。私ね、希乃愛が好きなの。すごく大切で……。だから、今日は希乃愛と過ごしたい。こんなワガママ今日だけだから、いいかな?」
「うん、香江達に全部押し付けた私が悪いもんね」
「違うの。悪いとかそういうんじゃなくて……。私、お姉ちゃんが帰ってきて希乃愛が取られちゃうとか思って悲しかった」
「うん」
「けど、取られるとか取ったとかじゃなくて。希乃愛は物じゃないから。だから、私も一緒に希乃愛が大きくなるのを、あの子の幸せを見守りたいの!」
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