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「……ごめん。私が悪いのは分かってる。分かってるんだけど。ごめん、ごめんなさい…」
地面にしゃがみ込む姉が、手をアスファルトについて体を震わせた。
謝罪をして欲しいわけじゃない。謝って済む問題でもない。
「えー、どうしたの??ママぁ?」
ただ、希乃愛が不安そうに私の上着の裾をギュッと掴んでいた。
私の家は4人家族だった。
父と母、そして私と4つ離れた姉の4人であのマンションに住んでいた。
姉は真面目で頭も愛想も良くて、両親とにとって自慢の娘だった。高校も進学校に通い、母が親戚に電話で嬉しそうに話していたのを覚えている。
高校卒業後に某有名大学付属の短期部を出た姉は、東京で就職し真面目に働いている──筈だった。
デキの良い姉と正反対の妹は、親からの期待なんかない。勉強なんか出来なくても、怒られることさえなかった。
将来の夢もない。やりたいこともない。
でも高校はそれなりに楽しかった。友達と遊んだり、バイトしたり、空っぽなりに普通に楽しめていたと思う。
高校最後の夏休み。
仕事で忙しくて帰省できないと思っていた姉が、小さな子供を連れて帰ってきた。
それが、私と希乃愛の出会いだ──。
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