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姉が消えてから、数日後。国民健康保険に医療受給者証、個人番号カード等の書類が送られてきた。
出ていく際に役所で手続きをしていったらしく、住所は実家にされていた。
捜索願いを出したけど、姉の行方は分からず。父が希望しなかったため希乃愛の父親も不明のまま。
それから、私達の生活は大きく変化する事となる。
看護師長を務めていた母は仕事をすぐ休むことができなくて、認可外の保育園に希乃愛を預ける事になった。
母が認可外は高いと嘆いていたけど、待機児童が多いという事、姉の書類が用意できないため仕方が無いらしい。
「香江、希乃愛の送迎よろしく」
「えー、私約束あるんだけど」
「おこづかいあげるから……お願いね!」
「いえーい!」
急いで仕事に向かう母の背中を見送って、リビングの座布団上に残された希乃愛に目を向ける。
もうすぐ1歳になるこの子は、オムツが濡れたとかお腹が空いて泣くことは少なくて、静かに座ってるか寝転がってるだけだった。
何も訴えてこないから、ただ同じ部屋にいればよし。手のかからない子なんだ、としか思わなかったけど。
「あー、うーとか喃語も出ないのよ。健診ではどうだった?」
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