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「あー、すみません。親戚の子なので分からなくて」
「そう……。もっと話しかけてあげてね」
日中この子を世話をしてくれる先生が、心配そうに口にする。
話しかけてあげてかぁ。
抱っこ紐の中の希乃愛に視線を落とすと、その大きくて素朴な瞳とパチッと目が合った。
「香江、いつ子供産んでたのー?」
「あは、親戚の子だよ~」
父も母も世間の目を気にしていたから、姉の子供だと言わないよう念を押され、最初は"親戚の子供"という事にしていた。
「えー、可愛い!ねぇ、公園行こうよ!」
学校の友達のリカ達と公園で遊んだり、ファミレスに行ったり、希乃愛は静かな子だったから連れ回して遊んだりした。
「なんも喋んないの?」
「うん。保育園の先生にもいっぱい話しかけてって言われた」
「1歳だっけ?名前は?」
「希乃愛だって」
「へー。希乃愛ちゃーん、一緒に遊ぼ」
リカ達もたくさん抱っこしてくれたし、珍しい玩具のように遊んでくれたから凄く助かった。きっと、希乃愛にとっても良かったんだろうな。
夏休みが終わっても姉が戻ってくる事がなかったから、学校が終わって保育園に迎えに行くのは私の役割になっていた。お母さんが帰ってくるまでこの子を見ていればお小遣いも貰えるし。
先生のあやし方も上手だったのだろう。希乃愛もやっと、喃語というものがではじめた。
「希乃愛~、迎えに来たよ」
「あっ、あぅー」
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