225人が本棚に入れています
本棚に追加
「どうしたの?」
「だって…、」
いつもと変わらない穏やかな声のトーン。
その響きだけで、主任の優しい顔が思い浮かぶから、じわりと涙が浮かんできた。
頭ん中ぐちゃぐちゃで、お姉ちゃんが家にいる状態で、主任を家へ招き入れる事なんて出来ない。
「あの、実は姉が帰ってきてて、家の中が落ち着かなくて」
「へー、お姉ちゃんいるんだね。香江ちゃんと似てるの?」
「いえっ、全然………っ、……」
「香江ちゃんどうしたの?」
「……な、なんでもないです」
鼻がツンと痛くなって、声がしゃくり上がった。
姉が帰ってきてから、希乃愛が少しずつ懐いていく姿を見るのが辛くて、ずっと我慢していた。
1度、零れ落ちはじめるとボロボロと滝のように涙が流れていく。
拭っても拭っても、どんどん溢れるから鼻水も啜る事になるから電話越しでも泣いているってバレバレだ。
急いで通話終了ボタンを押したところで──、
「香江ちゃん!!」
後ろから彼の声が耳に入った。
振り返るのスマホを片手に持った主任が、こっちに走ってくるのが涙でぼやけた視界に入る。
「……主任!?な"、んで……?」
「泣く時は、呼んでよ香江ちゃんか1人で悲しい思いしているなんて、俺が悲しいよ」
「……っ、うぅ。主任…」
「主任じゃなくて、みっくんだよ」
「……………………………み、っく"ん」
ふわりと抱き締められると、主任の匂いと心臓の音が聞こえてきて、タガが外れたように声を出して泣いてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!