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「……どうして、主任がそれを??」
「うん。大丈夫、知ってるよ。お姉さんの子供なんでしょ?香江ちゃんが代わりに一生懸命愛してあげたんだよね」
「は?なんで……?」
「はは。最初、香江ちゃんの家に泊まった夜。お父さんが酔っぱらって泣きながら語ってたからね。香江は凄くよい子だって、幸せになって貰いたいって言っていたよ」
あの親父、そんな事までベラベラと喋っていたのか。大きな息を吐いて、脱力と共に上半身が崩れていく。
でも、昔は怒られてばかりだったのに。
そんな父が、私のことそんな風に思っていてくれたなんて、全然気が付かなかったな。
気恥ずかしさと嬉しさが混じって、胸の奥がくすぐったくなった。
「あーあ。俺、いつ、香江ちゃんから話してくれるんだろうって待ってたんだけどな」
「ご、ごめんなさい……て、知ってたなら言って下さい!」
唇を尖らせて主任がシュンとするから、慌てて謝罪の言葉を口にする。
「それと、お母さんからもLINEきてたんだ。香江ちゃんが落ち込んでるって。遅くなってごめんね」
彼が私の頬に触れて、クイッと顔をあげてから指先で撫でるようくるくると髪をいじりだす。
「落ち込んでなんか…………、いえ落ち込んでます。凄く落ち込んでるんです。私は仕事が終わってから、姉がいる家に帰りたくない最低野郎なんです」
「うん、いいよ。香江ちゃんの家出、ここでいい?」
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