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「だ、駄目ですよ!」
「なんで?」
「家に帰らなかったら、あの子が寂しがるし!なんの説明も無しに家出なんて出来ません!!」
「ははっ、家出って宣言してするものじゃないよね。それに、もう香江ちゃんの中で答えは決まってるんだね」
主任が柔らかく微笑むから、胸がギュッとなってこの場から離れがたい気持ちが沸き上がる。
家には帰らなきゃいけないけど、このままずっと一緒にいたいと思うのも本当で。帰らなきゃと思う反面、帰りたくないという気持ちも少しだけある。
「……でも、もう少し一緒にいたいです」
彼の服の裾をキュッと握ってオズオズと、下から見上げると、軽いキスが何度も落ちてきて頭をよしよしと撫でられた。
「うん、素直だね。良い子の香江ちゃん、ちょっと待っててね」
フッと口元を緩めた彼がスマホを片手にソファから立ち上がる。誰かに連絡するのだろうか。
て、連絡するとしたら私のお母さんしかいないじゃん!?
背伸びして主任のスマホを奪い取ろうとするも、抱き寄せられてのがっちりホールドで身動きが取れない。
「はい、香江ちゃんは家にいます。もう落ち着いていて。はい、はい、大丈夫です。それで、もし良かったら──」
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