ポケットのボヤき

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ポケットのボヤき

「偶には散歩でもしてみたらいかがですか?」 「嫌だよ、疲れるし。それに帰って寝るだけの家にも、意味を見出さないと。唯一の自由時間の為にもね。」  理央は、半ば不貞腐れた口調でポケットに反論する。毎日業務上の会話ばかりで、日常会話に無縁な口は些かぶっきらぼうである。 「昔はそんなでは無かったのに…好きだったでしょう?宝物探し。もう嫌いになったんですか?」 「……違、…。」  確かに、子供の頃は見るもの全てが新鮮で、景色が夢に溢れていた。ポケットは理央の宝箱であり、時には秘密の親友でもあった。  汚いから捨てなさい!と叱られるような、ピカピカに磨いた泥団子や、変わった色形の石ころも、紅葉も。ポケットは怒らずに二人だけの内緒だと受け入れてくれていたというのに、理央は、単調な日々を生き抜く事を言い訳に、ポケットと“宝探し”をしに行く事を知らずと諦めてしまっていたのだ。
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