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体育祭とすれ違う想い
月日が経過し、運動会のシーズンがやって来た。
たいして広い校庭がある訳では無い我が校は、他のグラウンドを借りてでの体育祭となる。
しかも生徒達の交流が目的なので、わざわざクラス毎では無く、名前の順で赤白に分けられてしまうのだ。
そして私は、相変わらずの運の悪さで、1/2の確率で長塚君とは違うチームとなった。
そうなると、練習も体育祭の席も遠い訳で……。
祐子ちゃんは無事、長塚君と同じ白組になっているらしい。
神様は、私が嫌いなんでしょうか?
しかも、理恵ちゃんや亀ちゃん、夏美ちゃんまで白組で、私一人で赤組でした。
だけど
「たまちゃ~ん! 同じ白組だよ」
林田さんが抱き着いて来た。
いやいやいや!
あなたのグループ、皆様赤組ですやん。
腰が引けている私に
「史郎、たまちゃんも白組だって!」
林田さんが千田君を呼んだ。
(いつの間に、名前呼び!!)
驚いて林田さんの顔を見ていると
「良かったな、メグ」
とか言って、お互いに名前を呼び合っている。
羨ましい……じゃなかった。
いくら私でも、カップルの間に入るなんてそんな不粋な真似はしませんよ。
「いや、私は大丈夫」
逃げようとした私の首をヘッドロックして
「たま~、俺、お前の告白手伝ったよな?」
と、千田君が悪魔の笑みを浮かべて呟いた。
「あれが原因で、メグにあらぬ疑いを掛けられたんだよな~」
泣き真似する千田君に
「ヒィッ!ごめんなさい」
小さくなっている私に
「だから、たまちゃんはうちのグループね」
にっこり微笑んで林田さんに言われてしまった。
仕方ないと諦めていると、視線を感じて振り向いたら……長塚君がこちらを見ているではないですか!
(え?何で?)
千田君にヘッドロックされている状態から、私の反対側に立って笑っている林田さんが目に入った。
(あぁ!長塚君は、林田さんを見ているのね!)
と納得しつつ、やはり長塚君は林田さんが好きなのだと悲しくなった。
噂は本当なのかもしれないと、私は落ち込んだ気持ちを必死に起こして
「千田君、腕!離して!」
と言うと
「じゃあ、体育祭まではうちのグループな!」
そう言って千田君が腕を離した。
私は自由になって直ぐに、長塚君の位置から林田さんが見えるように横に移動すると
「たまちゃん、何してるの?」
と、林田さんに首を傾げられてしまう。
「え?……あ~、障害物かなぁ~って」
「え?」
「あははは!なんでもない」
笑って誤魔化しながら、長塚君が居た場所に視線を戻すと、既にそこには長塚君の姿は無かった。
(やっぱり、私が邪魔で行ってしまったのね。ごめんね、長塚君。次は邪魔しないから!)
胸はやっぱり痛むけど……、自分の気持ちを押し付けるのだけは嫌だった。
私が好きなのに、振り向いてくれないなら独りで居ろ!とは思えない。
好きだから……大好きだから、長塚君には幸せになって欲しい。
私じゃ……長塚君を幸せには、出来ないから……。
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