体育祭とすれ違う想い

1/4
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ

体育祭とすれ違う想い

 月日が経過し、運動会のシーズンがやって来た。 たいして広い校庭がある訳では無い我が校は、他のグラウンドを借りてでの体育祭となる。 しかも生徒達の交流が目的なので、わざわざクラス毎では無く、名前の順で赤白に分けられてしまうのだ。 そして私は、相変わらずの運の悪さで、1/2の確率で長塚君とは違うチームとなった。 そうなると、練習も体育祭の席も遠い訳で……。 祐子ちゃんは無事、長塚君と同じ白組になっているらしい。 神様は、私が嫌いなんでしょうか? しかも、理恵ちゃんや亀ちゃん、夏美ちゃんまで白組で、私一人で赤組でした。 だけど 「たまちゃ~ん! 同じ白組だよ」 林田さんが抱き着いて来た。 いやいやいや! あなたのグループ、皆様赤組ですやん。 腰が引けている私に 「史郎、たまちゃんも白組だって!」 林田さんが千田君を呼んだ。 (いつの間に、名前呼び!!) 驚いて林田さんの顔を見ていると 「良かったな、メグ」 とか言って、お互いに名前を呼び合っている。 羨ましい……じゃなかった。 いくら私でも、カップルの間に入るなんてそんな不粋な真似はしませんよ。 「いや、私は大丈夫」 逃げようとした私の首をヘッドロックして 「たま~、俺、お前の告白手伝ったよな?」 と、千田君が悪魔の笑みを浮かべて呟いた。 「あれが原因で、メグにあらぬ疑いを掛けられたんだよな~」 泣き真似する千田君に 「ヒィッ!ごめんなさい」 小さくなっている私に 「だから、たまちゃんはうちのグループね」 にっこり微笑んで林田さんに言われてしまった。 仕方ないと諦めていると、視線を感じて振り向いたら……長塚君がこちらを見ているではないですか! (え?何で?) 千田君にヘッドロックされている状態から、私の反対側に立って笑っている林田さんが目に入った。 (あぁ!長塚君は、林田さんを見ているのね!) と納得しつつ、やはり長塚君は林田さんが好きなのだと悲しくなった。 噂は本当なのかもしれないと、私は落ち込んだ気持ちを必死に起こして 「千田君、腕!離して!」 と言うと 「じゃあ、体育祭まではうちのグループな!」 そう言って千田君が腕を離した。 私は自由になって直ぐに、長塚君の位置から林田さんが見えるように横に移動すると 「たまちゃん、何してるの?」 と、林田さんに首を傾げられてしまう。 「え?……あ~、障害物かなぁ~って」 「え?」 「あははは!なんでもない」 笑って誤魔化しながら、長塚君が居た場所に視線を戻すと、既にそこには長塚君の姿は無かった。 (やっぱり、私が邪魔で行ってしまったのね。ごめんね、長塚君。次は邪魔しないから!) 胸はやっぱり痛むけど……、自分の気持ちを押し付けるのだけは嫌だった。 私が好きなのに、振り向いてくれないなら独りで居ろ!とは思えない。 好きだから……大好きだから、長塚君には幸せになって欲しい。 私じゃ……長塚君を幸せには、出来ないから……。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!