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一瞬、ショックを受け掛けて、ハタと自分の格好を思い出した。
羞恥の悲鳴を上げるより先に、千田君が
「これから女子が着替えるから、ちょっと待ってろ!」
と叫んでドアを閉めた。
着替えた後も、しばらくの間は長塚君が私の顔を見る度に笑うようになってしまい、千田君に半べそかきながらフルフェイスの猫の被り物にしてもらうようにお願いした。
千田君曰く
「まぁ、長塚にバレたから仕方ない」
という事で、フルフェイスの被り物に変更されてホッとした。
体育祭が近付くにつれて、組毎での行動が増えて忙しさも合ってあっという間に体育祭になった。
私はフルフェイスを被ると、前が良く見えないから林田さんに手を取って貰って移動する。
二人三脚、綱引き共に中々の好成績を残し、赤白ほぼ互角の戦いになった。(ちなみに、商業科はオレンジ組だったりするんだけど、ぶっちぎりのチームワークでダントツ1位を独走していた)
ビリは免れたい赤白チーム。
応援合戦が追い上げの鍵になるらしい。
先輩達からも私の着ぐるみは大好評で、カッコイイ応援の後に可愛いチア風の踊り。
そして突然、サザエさんのエンディングが流れて、ミカンの形にしたダンボールから私が現れてお尻フリフリダンスをするという意味不明な応援合戦。
良いのか?本当にそれで良いのか?赤組よ!
所が……私の登場に大爆笑が起こり、応援合戦で赤組大逆転という快挙を起こしたのだ。
私の捨て身の行動が、優勝に導いたなら良かった。
終わった私は台車で撤収されたんだけど、ずっと爆笑されていたっけ……。
この一件以来、何故か他学年の先輩にまで『たまちゃん』呼びをされるようになっていた。
そしてこれがきっかけで、文化祭までも千田君達に巻き込まれるようになってしまう。
ちなみに、うちのクラスは執事&メイド喫茶をやったのだけど……裏方を希望したのに却下され、体育祭でボツになった帽子みたいに被る顔出したまちゃんで一人アニマル喫茶だった。(長塚君の執事姿を期待したんだけど、裏方になっていたから見られなかった)
私のアニマルたまちゃんは家族連れには大人気で、子供達と写メをたくさんとったお陰で売り上げは上々だった。
体育祭以来、千田君と林田さんに巻き込まれて困っていたけど、なんだかんだと楽しい時間を送れている。
そして文化祭最終日、せっかくだから裏方の男子も執事の服を着て写メを撮ろうという話になっているという噂を聞いた。
長塚君の執事姿が見たくてソワソワしていたけど、何故かアニマルたまちゃんの私との写メ希望者が後を絶たず……。
ようやく着ぐるみから解放された時には、既に長塚君は制服に戻っていた。
文化祭の後、売上金で打ち上げするらしく、打ち上げに向かうのでクラスにはもうほとんど人が残っていない。
「はぁ……」
執事姿の長塚君が見られなくて落ち込んでいると
「たまちゃん、長塚と写真撮った?」
と林田さんに聞かれて真っ赤になる。
「そ……そんなの無理だよ」
慌てる私に、林田さんがまだ教室で星川君達と帰り支度していた 長塚君に
「長塚~!写メ撮って良い?」
そう言って声を掛けてしまったのだ。
(そっか!みんなで撮るんだよね!)
教室に残っているみんなで写真を撮るなら、長塚君も嫌がらずに写真を撮らせてくれるだろうと思っていたら……何故か星川君達は長塚君から離れ、長塚君は無言でこちらに向かって歩いて来たのだ。
「????」
疑問符が頭の上に並んでいる間に、長塚君は当たり前のように私の隣に並んで立っている。
しかも、長塚君の左腕が私の右腕に当たる程の至近距離で並んでいるから、私は失神しそうになるのを必死で堪えていた。
「たまちゃ~ん!カメラこっちだよ~」
突然の出来事に、隣の長塚君を見上げていた私に林田さんが笑いながら手を振る。
その時、一瞬だけ長塚君が私の方に視線を向けて目が合う。
『ドキン』っと心臓が高鳴り、長塚君から目が離せなくなってしまう。
すると長塚君は直ぐに林田さんの方に視線を向けると
「着替える前の姿でも、一緒に撮りたかったな」
そう呟いたのだ。
(着替える前?)
首を傾げ、アニマルたまちゃん姿だと気付いて
「えぇっ!」
と叫ぶと
「たまちゃん!カメラのレンズ見てってば!」
そう叫ぶ林田さんに怒られてしまう。
私が長塚君の発言にオロオロしていると、長塚君は「プッ」と吹き出して
「本当に……見てて飽きないよね」
と呟いたの
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