恋のキューピットに任命!

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恋のキューピットに任命!

 出会いは高校2年の春 友達の好きな人が、私の隣の席になった事がきっかけだった。  桜が舞い散る、高校2年の4月。 「クラス替え、どうなるかなぁ?」 「同じクラスになると良いね~」 高校に入学してから仲良くなった亀山みどりちゃんと、幼馴染みの安藤理恵ちゃんに大城夏美ちゃんの4人で会話しながら学校への通学路を歩いていた。 地元でも成績が平均的な公立学校である我が緑ヶ丘高等学校は、小高い山の上に校舎がある。 しかし、山に上って校舎があるのではなく、山自体が校舎になっているので、校門に入って下駄箱があるのだが、下駄箱からひたすら階段を上ると校庭と校舎が現われるのだ。 お陰で、この学校に通って痩せたような気がする。毎日、校庭までの階段をひたすら上り、その上にそびえ立つ3階建ての校舎に到着する。 しかも、地下に当たる部分にも教室があるので、移動教室の時はひたすら階段との闘いだったりするのだ。 ちなみに校舎は1階が1年生、2階が2年生、3階が3年生となっていて、学年が上がる毎に、成績順にクラス替えが行なわれる。 (1年間の成績はもちろんだけど、学年最後の期末テストで全てが決まるの!) 成績順位が上から、有名大学進学を目指す特進クラスが1組になる。 1組には、学年の成績優秀者が集められている。 2組から5組は、大学進学組や短大、専門校組が集まり、6組が就職希望の商業簿記3級取得を目指して勉強する商業科クラスに分類されている。 まぁ、平均的な成績の場合は、3組と4組のどちらかになるので、私達が同じクラスになるのは1/2の確率な訳だ。 「でもさ、もしたまちゃんが田川君と同じクラスになったら、座席は絶対に隣だよね。良いなぁ~」 通学路を歩いていると、亀ちゃんこと亀山みどりちゃんが溜め息混じりに呟いた。 ちなみに田川君とは、亀ちゃんが片思いしている男子の名前だ。 「え~!そんなのわからないじゃない?」 笑って答える私に 「案外、亀ちゃんの予想が当たったりして」 と夏美ちゃんが笑って言うので 「ナイナイ!万が一、私が田川君と同じクラスにでもなって隣の席になったら、亀ちゃんのキューピットになってあげるよ」 そう笑って答えると、理恵ちゃんに真顔で 「あんた……マジでそうなったら、ちゃんとキューピットになりなさいよ!」 と釘を刺されてしまった。  でも……この時の私は「少女漫画じゃあるまいし、そんな都合の良い話がある訳ない!」と軽く思っていたのだ。  そしてクラス分け発表の後、自分のクラスの黒板に書かれた座席表を見て絶句した。 「嘘……」 そう呟いた私の肩に、私以外は同じクラスになった3人はニコニコと笑顔を浮かべると、夏美ちゃんと理恵ちゃんは私の肩に手を置き 「キューピット、ファイト!」 と、親指を立てた。 そして亀ちゃんは私の手をギュッと両手で握り締めると 「たまちゃん、頼りにしているからね!」 真剣な眼差しでお願いして来たのだ。 私、田上優里。 高校2年の新学期で、亀ちゃんの恋のキューピットに任命されました。
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