クロノスの秘密

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土曜日の朝、咲良は心躍る期待を抱きながら、地元の名門、樹里大学(じゅりだいがく)に向かった。キャンパスは、古い木々に囲まれた歴史あるレンガ造りの建物が並び、早春の息吹が敷地内の花壇に咲く花々を優しく揺らしていた。紅白のチューリップが競うように顔をのぞかせ、静かな威厳を漂わせていた。会場は、最先端の科学に関心を持つ多くの学生や研究者で賑わい、活気に満ちていた。 講演会が始まると、講師の真壁 瑛斗(まかべ えいと)が壇上に姿を現した。彼は高身長で、磨かれた知的な風貌をしており、スマートなグレーのスーツを身にまとっていた。彼の髪はきちんと整えられ、眼鏡が彼の鋭い知性を際立たせていた。彼は「クオンタムエネルギーの新展開」というテーマで、落ち着いた口調で話し始め、やがて「クロノス・エッセンス」という言葉が織り交ぜられた。咲良は、その未知の言葉に耳を傾け、メモを取り始めた。 講演が終わると、会場は質問や議論でさらに活気づいた。咲良は勇気を振り絞り、真壁に近づいた。その時、真壁は一人で舞台の端に立ち、外に面した大きな窓から差し込む陽の光に照らされていた。彼の姿は思慮深く、何かを遠く望むようなまなざしで窓の外を見つめていた。 「クロノス・エッセンスについてもっと知りたいんですが…」と咲良が切り出すと、真壁は彼女の瞳をじっと見つめた。彼の眼差しには、温かみと興味が宿っていた。 「あなたの好奇心は賞賛に値する」と真壁は言い、彼女の肩を軽く叩きながら、「来週、ミライ・ラボでのミーティングに参加してみませんか?クロノス・エッセンスについて、さらに深く議論しましょう」と提案した。 咲良の心は希望でいっぱいになり、内心で小さく歓喜した。彼女はユウトの指示に従い、新たな協力者である真壁瑛斗という価値ある出会いを果たしたのだった。彼女はユウトへの返信を心待ちにしながら、ミーティングの日を待ちわびた。 この出会いは、咲良にとって新たな一歩であり、物語におけるクロノス・エッセンスの謎解きへの重要な進展を意味していた。
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