クロノスの秘密

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夜が深まる中、ミライ・ラボでの講演会が終わった後、テクノゲートの本社ビルが都市のスカイラインに冷たく光り輝いている。その最上階にある間宮聡(まみや そう)のオフィスは、野望に満ちた暗闇と寂静の海のようだ。間宮は、講演会で得た知見を胸に、大きな窓の外に広がる夜景を眺めていた。今日、彼はミライ・ラボの講演会に客として参加し、クロノス・エッセンスについての新たな情報を耳にしていた。彼の視線の先には、自らが変えようとしている未来がある。彼の心は、冷徹さと深い計算によって満たされているが、その野望の根底には、未来への微かな迷いが潜んでいた。 「我々の目標はクリアだ。クロノス・エッセンスを完全に掌握し、時間を我々の意のままに操る。」間宮の声は、部屋に響き渡る冷たい鋼のようだった。「どんな手を使っても、ミライ・ラボから情報を引き出せ。失敗は許されない。」 部下たちは彼の言葉に頷くものの、その目には不安がちらついていた。一人が小声で漏らす。「しかし、これは正しいのだろうか?未来を変える力...それは神が持つべきものではないか?」 間宮はその疑問に冷酷に応えた。「疑う者は退出せよ。我々は新たな時代の扉を開く者だ。未来は、我々が創る。」 テクノゲートの影は、ミライ・ラボの周りを静かに、しかし確実に取り巻いていた。最先端の技術と情報ネットワークを駆使し、クロノス・エッセンスに関する全てのデータを収集している。それはまるで、未来を左右する大局的なチェスゲームのようだった。 夜の帳が降りた研究所の周囲では、テクノゲートのエージェントたちが影から影へと移動し、研究成果の盗み出しを試みていた。しかし、彼らは知らない。咲良とユウトが既に彼らの動きを感じ取っていたことを。 咲良はユウトに力を込めて言った。「私たちだけが、未来を守れる。私たちの行動が、全てを変えることができるんだ...」彼女の言葉には、恐れと同時に強い決意が込められていた。
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