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22-15
ヴィジブルレイーーー!
ステージが終わった。ギターをステージスタッフへ渡した。手首から手のひらにかけて、ぽたぽたと汗をかいている。もちろん首筋や背中もだ。
目の前にいる夏樹は、全身がずぶ濡れだ。放心状態で観客席を見ている。心臓がある左側に立ち、その左腕を抱えるようにした。約束を果たすために。
「ゆうとーー?」
「倒れても支える。男に二言はない」
「なつきーー、ゆうとー、カッコいいぞ!」
「なつきー、ぶっ倒れろよー」
「俺は天邪鬼なんだ。倒れてもいいって言われると、素直にそうしたくないもん」
「可愛くないなーー」
「ぎゃはははは!」
佐久弥から抱きしめられた。そして、3人で手を繋ごうとして止めた。メンバーは他にもいるからだ。サポートのベース、ドラムだ。2人を引っ張ってきて、さらに佐久弥が植本さんを連れてきた。そして、6人で両手をつなぎ合い、大きくジャンプをした。
夏樹が泣き出した。俺も涙をぽたぽたと落とした。仙頭カメラマンがそばにきて、大泣きしている俺達の姿に、シャッターを切ってくれた。最愛なる思い出の一つとして。
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