1-1 指輪を買いに行く日

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1-1 指輪を買いに行く日

 かつてあの人には心のドアが存在した。本当のあの人は、弱みを見せられる子供だ。強がりで意地っ張り。自分は強いふりをしている。俺と似ている子供だ。感情を表すよりも、我慢してしまう。そして、俺はそのドアを開いた。それには呪文が必要で、大きな声で唱えた。  ……そのままのあなたが大好きと。  けっこう自由になったあの人は、今日もエロさを発揮している。魔法の呪文で、俺のことを誘い出している。 「ゆうとくーん。こっちにおいで」 「もうっ、なにかするだろ?」 「『オムレツを焼く』のにー?」 「もうっ、その手にはのらない!」 「モウモウ言うと、ウシになるぞー?」 「ヤギになってやる。メエエ……」 「モウモウ……」 「メエメエ……」 「ゆうと、可愛い……」 「ゆうりさん。かっこわるい……」  まるで回転木馬(メリーゴーランド)のようだ。音楽が鳴り終わるまで抜け出せない。いつまでも。
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