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 すると、すがりついている身体が小刻みに揺れ始めて、笑い声が聞こえてきた。すぐに顔を上げると、いじめっ子の早瀬から見つめられていた。 「黒いのは……観葉植物の影だよ」 「マジで!?……いるんだよね?」 「本当だから、勇気を出して見てごらん」 「うん……」  恐る恐る床へ視線を向けると、テラス窓のそばに置いてある、パキラからの影が出来ていた。空調の風に揺れている。  ホッとして力が抜けてしまった。キッチンの黒いヤツではなかった。しかし、早瀬のことを怒る気にはなれなくて、仲直りのようなきっかけが出来たことが嬉しい。 「はいはい、ゆうとくーん」 「うん……」 「寡黙な男がよければ続けてもいいぞ?」 「ううん。ペラペラしゃべってよ。黙ってほしい時には言うから」 「可愛いことを言う子は……」 「な、なに?きらい?」 「……大好きだ」 「あ……」  どうしよう?不覚にも胸がキュンとした。近づいてくる唇を避けることは出来なくて、軽く重ねられた。微笑み合って、元通りに戻った。よかったと思っていると、視界が揺れた。天井を見上げている状態だ。この状況は危険なものだ。夜にしたのに、またこの展開か? 「裕理さんっ、もうーっ」 「可愛いからだ」 「もうーっ、そんなこと言ってもダメ!ショップに行くんだよね?」 「モウモウ言っていると、ウシになるぞ?」 「メエメエー。ヤギだからね」 「モウモウ……」 「メエメエ……」 「ごめんね?腹ペコだ。おかわりする」 「あああ……」  腹ペコの早瀬から、美味しく頂かれてしまった。この展開も回転木馬のようだ。いくら逃げても、後ろを追いかけて来る。音楽はエンドレス。これが俺と早瀬のストーリー。
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