怠け者とナマケモノ

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「あぁ〜……だりぃ。」 僕は常々思うのだ。なぜ人間には、「無気力状態」というものが存在するのだろうか。 ああ、困った。このままでは仕事が全然捗らない。締め切りに間に合わない。学校の宿題もまだなのに。 その時、ふと窓の方を向いてみると、木の枝にぶら下がっているナマケモノが見えた。茶色くてボサボサな毛並み、長い腕、枝にしがみつく爪、年老いた賢者のような顔。笑っているようで笑ってなくて、体の力が全部抜けていて、周りの邪気を全て払えるくらいゆったりとした雰囲気を醸し出している。 こんな生き物を見ると、どうしても羨ましく思ってしまう。何も考えずに生きて、何の負担もなくダラダラと過ごせる。そんな生活は、人類には許されていないのだ。 いいな。いいなぁ。 頭の中でその言葉をリピートし、ソファの上でゴロゴロしていたら、一つ大事なことを思い出した。ナマケモノは、「怠け者」という立場に囚われているのだと。彼らは別に進んで怠けているわけではなく、怠けることしかできないのだ。天敵が現れた時に少し速く移動するだけで、それ以外はずっと怠けて過ごすようにできているのだ。自然にそんな生き物になってしまったナマケモノより、人間の方が遥かに恵まれている。僕らには、怠けないと選択する自由がある。怠けてはいけない理由を考えられる頭脳がある。 よって、僕は起き上がらなければならない。
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