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37.俺は本当にしょうもないな⋯⋯。
「セルシオ、あなたは覚えてなくても、私とあなたは1年間の結婚生活を送っています」
カリンから聞かされた話は驚くような事ばかりだった。
ベリオット皇帝が亡くなり、愚かなクリス皇子が皇帝に即位したこと。
カルパシーノ王国が帝国から脅かされはじめたこと。
そして、ルイス皇子がカルパシーノ王国を滅ぼし俺が自害したこと。
何より驚いたのは彼女は俺を取り戻したくて時を戻したという事だった。
「ルイスは自分の狙いは私でセルシオではなかったはずだと言いました。だから、もし同じような事があっても死なないでください。あなたのいない世界が許せなくて、私は何度だって時を戻してしまいそうです。ルイスを生贄にしたこと⋯⋯彼を傷つけました。この世界に生きる人全てを冒涜しました⋯⋯」
潤んだ瞳で告げてくるカリンを俺はただ抱きしめることしかできなかった。
俺は出会って早々俺を慕ってくれる彼女を、無垢な可愛い子としか思っていなかった。
しかし、彼女は俺を失い俺のことを取り戻そうと、1人で戦ってくれていたのだ。
「俺は本当に愚かだな⋯⋯それにしても、カリンは時も戻せるなんて凄いな」
自国が攻められれば、勝手に自分が狙いだと自害するなんて愚かな主君だ。
カリンは1人残されてどれだけ不安だったことだろう。
「私は創世の聖女の生まれ変わりらしいのです。だから生贄なんて非道なことを考えても神聖力は無くならないとルイスが言ってました」
生贄になったのに彼女を思い続けるルイス皇子が俺には理解できない。
俺だったら理由はどうあれ自分の命を生贄として扱った彼女を恨んでしまいそうだ。
何度生まれ変わっても、創世の聖女マリアンヌを愛すると誓った初代皇帝リカルド。
ルイス皇子は本当に彼の生まれ変わりのようだ。
俺はもしかしたら運命の2人に入り込んだ間男かもしれない。
それでも、カリンを愛おしく想う気持ちは抑えられなくて、誰かに彼女を譲れるとは思えない。
「カリンが創世の聖女の生まれ変わりで凄い力を持っている子だとしても⋯⋯俺にとっては守りたい女の子なんだ。もう、絶対1人残したりしない。俺は本当にしょうもないな⋯⋯」
「私もセルシオを守りたいです。セルシオはしょうもなくなんかありません。優しくて頼りになる私の旦那様です⋯⋯」
柔らかく微笑むカリンは本当に彼女の澄んだ心のように綺麗だ。
俺を優しいと言う彼女は人を見る目がないと思う。
俺は割とドライに自分の利益になる道を選んできたと思う。
人を騙すこともしてきたし、自分の美しい容姿を利用してきた。
女は黙ってても寄ってきたので、利用することがあっても愛したり優しくしたりしたことはなかった。
奴隷にされても運よく逃げ出せたし、権力者である帝国の皇帝に魅入られ
国王にもなれた。
恐らく目の前にいる天使のような子は俺を買い被り過ぎている。
それでも、彼女に愛され続けたいから優しくて頼りになるセルシオでいたいと思った。
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