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院長が手を上げて制した。
「とりあえず、食べよう」
そう言ってしばらくはお互い無言で食べた。その後くだらない話をしながら食べたが、緊張してあまりウナギのおいしさがわからなかった。重箱をかたづけてお茶を飲むと思いきって切り出した。
「佳奈美さんとの件です」
「……やはりそうか」
「申し訳ございません。この縁談はお断りさせて下さい」
立ち上がって院長に頭を下げる。何も言わないのでしばらくそのままで頭を下げ続けた。
「……ふう。わかったよ、頭を上げて座ってくれ」
頭を上げると座れと手で指し示された。
腰を下ろすと、院長が口を開いた。
「理由をはっきり言ってもらえるかな」
「僕には好きな人が前からいます。実はその人と結婚前提で同棲を始めることになりました。佳奈美さんのことは前にも申し上げましたがそういう相手にはどうしても思えませんでした」
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