縁談《弘樹side1》

9/19

1396人が本棚に入れています
本棚に追加
/195ページ
 「そうですね。彼女は来週引き継ぎに来て、翌週から別の人にしばらく代わる予定です」  「図書館長には読み聞かせの手続きを任せて大変世話になっている。こちらにきている人に何かあったら申し訳が立たない。しかも患者の親とは……患者は子供だし、追い払うことも出来ないしな」  「院長。今日夕方柊さんが来たら、一緒に会って頂くことは可能ですか?」  「何時頃だ?」  「隆君が言うには夕方だろうと言うんです。時間はわかりませんが……」  「約束はできないが、連絡してくれ。できるだけ同席しよう」  「ありがとうございます」  「佳奈美のこと、君から言ってもだめかもしれないから、彼女が来る最終日に呼んで会わせよう。荒療治だがそれが一番かもしれん」  「わかりました。彼女には言っておきます」  「残念だよ、原田君。君には是非うちに入って欲しかった。君の実家は弟さんもいるしね、お父上から了承も得ていた。いや、もちろんそれだから佳奈美を勧めてくれたんだけどね」  それは父が勝手に決めたことだ。俺はここへ入ったときそんなつもりは全くなかった。弟のために出ていたに過ぎない。
/195ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1396人が本棚に入れています
本棚に追加