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ゆうかさんのお母さんが言った。彼女はシングルマザー。まだ若いのに、病気の子供を抱えて保険の仕事をしながら頑張っている。
じろりと睨んだ隆君のお父さんは隆君を連れて病室へ戻っていった。
「大丈夫?あの人ちょっとしゃれにならない感じだよね」
「ありがとうございました。実はそうなんです。最近声かけられることが多くて……」
「はっきり言わないとだめなときもあるからさ。気をつけてね。若いから勘違いされやすいんだよ」
「……そうですね」
みんなが病棟に戻っていく。そろそろ夕方だ。
私は本を片付けはじめた。
じつは、隆君のお父さんが帰り際に待ち伏せしていることがここ最近しょっちゅうあるのだ。
お付き合いしてくれと言う。申し訳ないが付き合えないと言ったら、エスカレートしてきた。必ず私が来る水曜日を休みにしているようで、本の読み聞かせのときもいて、またきっと帰り際に声をかけられる。
カートに本のケースやパソコンなどを載せて業務用のエレベーターで裏口へ。
するとやはりいた。隆君のお父さんだ。
「美鈴さん。一度くらいお茶に付き合ってくれてもいいだろ?」
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