猫じゃないんだけど

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猫じゃないんだけど

休憩で社食に入る。 「あ、まいちゃん」 社食には遊星さんさんと清野さんと福山さんがいた。 3人は私を見つけて手を振る。 「一緒にどう?」 清野さんが優しく提案してくれる。 時間帯的に社食が少しにぎやかなので、 空席を探さなくて済むのは助かる。 「いいんですか?」 「私たちみたいなおじさんたちと一緒でよければ」 福山さんが笑う。 「そんなぁ、私の方こそ眼福です」 「またまた」 そんな会話をしながら私は3人の横の席に着く。 「なんか意外な組み合わせですね」 この3人って仲いいんだ?と思ってそう尋ねた。 「そう?」 「実は俺たち高校一緒なんだよね」 「え?そうなんですか?」 驚いている私に3人はうなづく。 「清野さんと福山さんが同級生で、私が一つ後輩なんですよ」 遊星さんが説明してくれる。 「へぇ、そうだったんですね」 そう言いながら、持ってきたパンをほおばる。 「まいちゃんはほんとおいしそうに食べるね」 「え?そうですか?」 福山さんにそう言われて恥ずかしくなってしまう。 「うんうん。表情もくるくる変わってさ」 清野さんが、私も見てニコニコしてる。 「そうだね。なんていうか…」 「「「猫みたい」」」 3人が声をそろえる。 「え?え?」 思わず3人を見渡してきょどってしまう。 猫…。 いやいやいや、猫と言えばどう見ても大和くんのほうだ(笑)。 「なんか天真爛漫でかわいいもんね」 そんなふうに言われると照れてしまう。 「いや、かわいいとか…。」 おじ様3人を目の前に照れていると、 「お疲れ様です」 佐川くんが通りかかる。 「お、佐川くんお疲れ様」 福山さんが挨拶を返す。 佐川くんはちらっと私を見て、すぐに自販機へと向かった。 「そう言えば佐川くんもネコっぽいよね」 「へ?」 遊星さんの言葉に思わず変な声を出してしまう。 だって、いったいどこが? 佐川くんはネコというよりは『オオカミ』だ。 孤高のけものって感じ? でも、清野さんも 「あぁわかる」 と言い出した。 「まいちゃんが家ネコなら、佐川くんはなかなかなついてくれない野良猫って感じかな?」 不思議そうにしていた私に、 福山さんが優しく説明してくれた。 あぁ、確かに。 その説明に私は妙に納得してしまう。 何となく気高くでも時折見せる人懐こそうな笑顔…。 「なるほど…」 「まぁ、俺たちおじさんにはどっちもかわいい子ネコちゃんだけどね」 そう言って笑いあってる3人を横目に、 私はそっと佐川くんを目で追ってしまった。 「こんにちわー」 後日、店舗に来た大和君を見て思う。 やっぱりこの人が一番『猫』だ。(笑)
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