佐川くんの告白

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佐川くんの告白

「お、お待たせしました」 デパート裏の通用口の前で佐川くんを見つける。 車止めのポールに腰掛けてタバコを吸っている。 その姿にさえドキドキしてしまう。 私を見て慌てて火を消す。 「行こうか」 わたしはうなずいてすぐ後ろを歩く。 「さっきはごめん」 「何がですか?」 「その、大和くんとのその、なんていうか、邪魔しちゃったみたいで」 「いえいえ、こちらこそ助かりました。あんな大和くん初めてだったんで、 どうしていいかわからなかったので…。ありがとうございした」 「あとその…、手。つないじゃって…」 「あっ…」 思い出してカッとなる。 「いえ、」 むしろうれしかったです、と心のなかでつぶやく。 「いらっしゃいませ」 スターライトコーヒーはそこそこの賑わいだ。 コーヒーをオーダーして、 丸テーブルに二人で腰を下ろす。 程よく暗い店内の隅っこの席でありがたい。 結局今回もおごってもらう。 「スイマセン」 「いや俺一応社員だし、バイトより稼いでるんで」 ちょっとしお気味の態度に安心してしまう。 「…大和くんと」 「え?」 「大和くんとほんとになんもないの?」 「うん」 「…」 「さっきはほんとにびっくりしたよ。 大和くんいつもと全然雰囲気違くて」 「…」 ちょっと沈黙が流れたので、私もコーヒーに口をつける。 なんだかみられている気がしてる。 ちらっと見ると、佐川くんの視線とぶつかる。 さっとそらされる。 「大和くんも、あんたのこと狙ってるからだよ」 「?」 吐き捨てるように言われた言葉に戸惑う。 そして、引っかかってしまう。 “大和くん”って…。 「彼はストレートな性格だよね」 佐川くんはコーヒーを見つめてつぶやく。 「え…と」 「あんたはどう思ってんの?」 コーヒーの波紋にぶつけるような言葉。 「…あの…」 はぁっとため息が聞こえる。 「ごめん、答えはいらないとか言っときながら、 こんなこと聞いて」 「いや…」 二人とも何も言わずに店内BGMを聞き流す。 程よい雑踏が本当にありがたい。 「まいちゃん」 しばらくの間の後、佐川くんが突然顔をあげて私を見た。 「な、何?」 しかも名前を呼ばれるなんて、余計緊張が走る。 「あぁ、えと…。俺のこと、どう思う?」 「…え?」 「あぁ、えっと、あぁ、もう…!」 そう言って頭を振った後 「恋愛の対象として見れる?」 思い切ったようにそう言った。 初めて見る。 こんなに真っ赤になってる佐川くん。 こんな状況にも関わらず、 めずらしさに見惚れてしまう。 「あぁ、ごめん。こんな」 狼狽している彼を見て我に返る。 「あの、むちゃくちゃ見れます!」 うわ、はず。 何言ってるんだろう。 佐川くんは一瞬目を見開いた後、 おかしそうに笑いだした。 「…よかった」 そう言った後もまだにやにやしている。 どうしよう、やばい。 これってほぼ告白だよね? 期待しても、よいのでしょうか?
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