大和君と佐川君

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大和君と佐川君

佐川くんに接客してもらった日から数日。 なかなか佐川くんに会う機会はなかった。 でも、このテナントには来てくれているらしい。 「こんちわ」 「あ、こんにちは」 今日は大和君がお手伝いに来てくれた。 どうやら広告が入ったらしく、 夕飯時は忙しくなると見込んだ支店長が、 ヘルプをお願いしたようだ。 「大和君お願いね」 「はい。任せてください!」 支店長の呼びかけに大和君は親指を立てて見せる。 「まだまだ余裕ありそうだね」 そう言って後ろの椅子に座って、メモをチェックしている。 本店のほうと商品を比べているようだった。 そこへ— 「お待たせしました」 佐川くんが紙袋を補充しに来た。 「あ、ありがとうございます!」 大和君がすくっと立ちあがって手を伸ばした。 「あ、私が…」 私の方が手が空いていたので慌ててそう言いかけた。 「いいよまいちゃん。これ結構重たいし」 そう言って大和君は笑いかけてくれた。 「スイマセン…ありがとうございます」 私はお礼を言って引き下がる。 大和君は"よいしょ"と紙袋をショーケースの横に収納する。 「本社のお手伝いなの」 聞いてもいないのに、中山さんが佐川くんに教える。 「そうですか」 一応というように笑顔を張り付けた佐川くん。 私と大和くんのほうは全く見ない。 わたしはちらっと大和君を盗み見る。 その瞬間いふと視線を感じる。 —! 視線のほうを見ると、佐川くんと目が合う。 え?もしかして見られてた? でもそれはほんの一瞬で…。 気のせいだったかな…。 「じゃ、」 佐川くんはそう言って戻っていった。 「大和君とは対照的よね」 佐川くんの背中を見つめながら、 中山さんがぽそっとつぶやく。 ほんとだ…。 私も心の中でそう思った。
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