佐川君はご機嫌斜め

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佐川君はご機嫌斜め

夏休み。 ゼミの合宿に参加したリ、 友だちと遊びに行ったり、 結構予定がつまっている。 夏休みは高校生バイトも多いので、 私のシフトはちょっと少なめ。 夏を満喫できるのはうれしいけど、 佐川くんに会えないのはちょっと寂しい。 「おはようございまーす」 久々の出勤。 「お、おはよう、お疲れ様」 支店長と高校生のバイト君がお出迎えしてくれる。 「来てそうそう悪いんだけどさ」 支店長が全然悪いと思ってない感じで言ってくる(笑)。 「なんでしょうか?」 「サービス課行ってきてくれないかなぁ」 「いいですよ」 「サービス課、今留守番の子しかいないみたいで、 包装紙配達できないんだって」 なるほど。 まぁ売り場(こっち)は今の時間なら人手足りてるし、 取りに行くのに問題はないけど…。 もしかして留守番って…。 「お、お疲れ様です…」 予想通りの佐川くん。 「あ、お疲れ様です」 安定の塩対応。 「…」 無言で包装紙を渡してくる。 「あ…。ありがとうござます」 持ってきた紙袋にごそごそと包装紙を入れる。 「…お休みだったんですか?」 「え?」 突然の会話に驚いてしまう。 まぁ、私が手間取ってたから、 その間を埋めるためには普通のこと。 だけど、相手は佐川くんだよ? 世間話とかありえない! そう思ってしまったけど、 こんなチャンスはめったにない。 私はすぐに答える。 「はい、夏期講習とかいろいろ…」 何となく“遊んでた”とはいいにくくて、 濁してしまう。 「そうですか」 このぶっきらぼうさ。 なんだよ! 会話膨らませるところじゃないの? そっちから話しかけてきたのにぃ! 『夏休みなのに大変ですね』とか、 『学生は夏休みも忙しいんですね』 とかあってもいいんじゃない? そう心で思ったものの。 これが本来の佐川くんだとあきらめる。 それにしても佐川くんの視線がいたい。 もたもたしているせいだろうか。 「あの、ありがとうございます」 やっとの思いで作業を終え、 佐川くんに頭を下げる。 「…いえ」 「あ、あの、私今日なんか変…ですか?」 あまりにもじっと見られてしまったので、 居心地が悪くてたずねてしまう。 「…ちっ!」 え? 今舌打ちした? したよね? 「何でもありません」 そう言うと佐川くんはサービス課のデスクについた。 もう、なんなの! かなり不機嫌そうな佐川君に背中を向けて、 私も少しイライラしながら店舗に戻った。
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