佐川君はご機嫌斜め

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「あらおかえり」 お店に戻ると中川さんが笑顔で迎えてくれる。 「ただいま。あ、これ包装紙です」 「ありがとう。助かったわぁ」 そう言ってにこやかに私から包装紙を受け取る。 「どうしたの?何かあった?」 さっきの佐川くんの態度へのいらだちともやもやが、 顔に出てしまってたみたい。 「うーん」 ちょっと言い渋っていると、 「もしかして、佐川くん?」 図星を突かれる。 「…私、なんか嫌われてるんですかね?」 思い切って中川さんに愚痴ってみる。 「なんか思い当たるの?」 「いやぁ、無意識になんかしちゃったかなぁ」 「でも、言うほど接点ないよね?」 「確かに」 「まぁ、でも嫌われてるって感じでもないように思うわよ」 「そうですかねぇ。」 佐川くんの舌打ちと不機嫌そうな顔が目に浮かぶ。 「…はぁ」 もう一度盛大なため息が漏れる。 「あらあら、だいぶ患っちゃってるわねぇ」 「いいねぇ、“若さ”だよねぇ」 そんな私を、中川さんと支店長はニコニコしながら笑って眺めている。 「あの…」 「あ、いらっしゃいませぇ」 お客様の来訪に私たちは笑顔で答える。 仕事してる間は、佐川くんのこと考えなくて済む。 私は一生懸命接客に努めた。
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