星が降る前に・・・・・・

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星が降る前に・・・・・・

 時計の針が14時30分を差した。  ピンポンパンポーン―――  ●●市のみなさま、こんにちは。■月●▲日、防災無線の時間です。  本日は地球最期の日です。  後悔のない時間を過ごすことはできたでしょうか?   地球へ接近中の隕石は予定通り、15時00分に到達します。  残すところ、約30分で地球は最期を迎えます。  現在、日本政府の機能は停止した状態となっています。殺人、放火、強姦、窃盗等の犯罪に気をつけましょう。  それではみなさま、後悔のない最期をお迎えください。  ■月●▲日、防災無線の時間でした。  ピンポンパンポーン―――  一切の抑揚のない機械的な放送が流れた。数日前に設定された自動音声なのだろう。人類が生み出した究極の遺作であるAIという存在が最後の時を告げたのだ。  校内に静寂が戻って来た。  今日、登校しているのはスバルとあかね以外にはいない。  街の公共交通機関は完全に停止し、市街地ではそこかしこで殺人などの凶悪犯罪が起こっている。  人間としての尊厳、モラルなどといった啓蒙、人類がその歴史とともに積み上げてきた誇るべき叡智は「地球最期の日」には何の役にも立たなかった。  結局、人間も動物であり、その本質は畜生となんら変わることがないことを証明しただけだった。  そんな中でも――― 「―――遅いよ、バカ―――」 「うん。ごめん」  スバルはあかねをやさしく抱きしめる。  あかねの身体はふるえている。  そのを止めるようにスバルはあかねをやさしく抱きしめる。終わりの時が刻一刻と迫って来る。 「言えて良かった―――」 「私もスバルのことが好きだよ―――」  幸せな時も苦しい時も時間は流れ続ける。  黒板の上の時計は14時50分を差している。 「外―――なんか明るいね」 「さっきの放送で言っていた隕石が近いのかもしれないよ」スバルはあかねの手を握り、窓に近づき空を見上げる。  周囲は白く明るくなっている。太陽とは別の光りが空に満ちていた。ここから見る街はいつもと同じに見える。  本当は阿鼻叫喚の光景が繰り広げられているが、。 「ねぇ。死んだらどうなると思う?」 「生まれ変わるとか?」 「地球ごとなくなるじゃん」 「じゃあ無理か―――天国とか地獄とか―――いや、もう一つあるよ」 「え? 何?」 「永劫回帰」 「エイゴウカイキ?」 「ニーチェの概念でさ―――要するに世界が無くなっても、もう一度同じ宇宙が生まれてもう一度同じ事を繰り返すってやつ」 「また隕石と衝突するわけ?」 「まぁそうなるか―――」あかねが「ははは」と笑う。もう少しだけ長く同じ時を過ごしたかった。  14時58分。 「そうしたらさ今度はもう少し早くに告白してね?」 「うん―――」 「愛してる―――」 「愛しているよ―――」  二人はお互いのを止めるように口づけを交わした。  15時00分―――世界は白く包まれていった。
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