~愛の祭典~

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「祭りで遊ぶということを、知らないんだ。もし、良かったら。遊び方を教えてほしい」 「祭りでの遊び方か……そうだ。この町の祭りは、愛の精霊を祭ったものなんだよ。それで、あっちに大きなテントが見えると思うんだけど。そこで、愛の精霊を題材にした見世物をやっているんだ」  青年がいう広場に、白くて大きなテントと、開けられた入口から中に入る人間の姿があった。 「それじゃあ、そこに行こう。なんだか、人間がたくさん集まっていて、いいものだと分かる」 「ふふっ……相変わらず、君は面白い物言いをするよね? それじゃあ、行こうか。あ、人混みが多いから、また手を繋ぐ? そうだ、僕の名前を言っていなかったね。僕は、ヒスイ。君の名前は?」  青年の名前は、ヒスイというらしい。  初めて人間の、単体での名前を聞いた。  そして、名前のない精霊の私に、ヒスイは名前を聞いてくる。  こういうとき、どう返せば怪しまれないだろうか……。  そう思っていたけど、テントの方から大きな声がして、そろそろ見世物が始まることを告げられる。
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