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ヒスイは慌てたように、再び私の手を握り、ベンチから立ち上がると走りだした。
「ごめん、見世物は2時間に1回なんだ。これを逃すと、夕方になってしまうから急ごう」
意図せず、再び感じることになった手の温もりに、私の視線は自然とその手に向いて走る。
なんとか間に合ったようで、ヒスイが2人分のチケット代金を払ってくれた。
愛の精霊を題材とした見世物だからか、テントの中には男女の人間や、女の人間が多かった。男2人で参加しているのは私たちくらいだろう。
狭く見えた内部は、意外にも広く、木でてきた骨組みもしっかりとして、暑苦しさもない快適な空間だった。
椅子が置かれた観客席という見る側と、少し高さがあり、長い台の上で人間が話をするのだという。
「そろそろ始まるよ。楽しんでもらえると嬉しいけどね。あとで、感想とか――」
そうこうしているうちに、男1人と、女2人の人間が姿を現して、口だけではなく、身体も使った話を始めた。
内容はもちろん、愛の精霊によって、結ばれた男女の物語。
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